ディズニーらしいコメディ映画。でもウィリアム・H・メイシーがいい!

Wild Hogs
2007年,アメリカ,99分
監督:ウォルト・ベッカー
脚本:ブラッド・コープランド
撮影:ロビー・グリーンバーグ
音楽:テディ・カステルッチ
出演:ジョン・トラヴォルタ、ティム・アレン、マーティン・ローレンス、ウィリアム・H・メイシー、マリサ・トメイ、レイ・リオッタ

 実業家のウディは妻に逃げられた上に破産、歯科医のダグはストレスを溜め込み、小説家を目指すボビーは仕方なくトイレ修理の仕事に就き、エンジニアのダドリーは恋愛に縁がないのが悩み。そんな4人は学生時代からのバイク仲間で“ワイルド・ホッグス”というチームを結成している。ある日、ウディは遠乗りに乗り出そうと3人を誘うが…
 ジョン・トラヴォルタ主演のコメディ・ロード・ムービー。ディズニーらしい毒にも薬にもならない感じだが悪くはない。

 50代に差し掛かったおじさんたちがいろいろ悩みを抱えながら旅に出るという話。世代的には“団塊”ではないが、まあ日本人の観客にはうまく訴えられる邦題ではある。アメリカでは中年の危機が50歳くらいで訪れるが、日本では定年とともに来るということだろうか。

 まあとにかく若い頃とは違うけれどまだまだ人生あきらめないし、若い者にもそう簡単には負けないという気概が気持ちいい。

 ただ、昔からの仲間だという設定にしては明らかにマーティン・ローレンスだけが若すぎる。仲間の一人にアフリカ系がいたほうがいいという考えはわかるが、年齢がちょっと。といわれて他にいい役者がいるかといわれるとなかなか難しいわけだが… マーティン・ローレンスのキャラクターは作品にあっているし、“おじさん”という枠も必要なわけだから、まあ妥協点としては妥当だと思うが、少し違和感があった。

 しかし、ウィリアム・H・メイシーが活躍するというのがこの作品のいいところ。主演はジョン・トラヴォルタだし、普通に考えればトラヴォルタがスターなわけだけれど、作品の中ではダメ男でメイシーのほうが光っている。この演出がこの作品を救ったことは間違いない。これでトラヴォルタが活躍しちゃったら、相当いやらしい映画になっていた。監督のウォルト・ベッカーはまだそんなにキャリアはないが、なかなかいい監督ではないか。

 しかし、ディズニーってのはいやらしい作品を撮る。マーティン・ローレンスを入れるというのも戦略の一つだが、ゲイの警察官を登場させるというのも一つの戦略だ。あからさまに差別をすることはないが、人々が抱える偏見をうまく利用しながら笑いにもっていく。暴力は登場するが血が流れたりすることはなく、もちろん人が死んだりはしない。酒場が爆発したのに誰も死なないどころか怪我もしないってのはちょっと無理があるんじゃないかと思うが、見ているときにはそこにあまり疑問を覚えることはない。その仕組みの周到さがなんともいやらしい。

 ファミリー向けにはこれでいいと思うが、こういう作品を喜んで見るような大人にはなりたくないものだ。毒にも薬にもならないが、もしかしたら毒にも薬にもなるのかもしれないのがディズニー映画なのだろう。

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