ハロルド・ロイドの真骨頂。アクロバットに優しい笑いが心地よい。

Why Worry?
1923年,アメリカ,77分
監督:フレッド・ニューメイヤー、サム・テイラー
脚本:サム・テイラー
撮影:ウォルター・ルンディン
出演:ハロルド・ロイド、ジョビナ・ラルストン、ジョン・アーセン、レオ・ホワイト

 大金持ちのハロルドは病気の療養のため看護師と召使とともに南米のパラディソ島に向かう。折りしもそのパラディソ島では金儲けをたくらむジム・ブレイクにより革命が行われようとしていた。そこにやってきてしまったハロルドだったが、そんなことは気にもかけない…
 喜劇王ハロルド・ロイドの全盛期である20年代前半の1作。飄々とした雰囲気がいつもどおりにいい。

 チャップリンとキートンとそしてロイド、チャップリンやキートンについては言われないのに、ロイドについて語るときは常に三大喜劇王という冠がついて回る。それは彼が3人の中で一番マイナーな存在だからだろう(特に日本では)。しかし、三大喜劇王といわれるだけ会って、彼もほかの二人に負けない面白さがある。

 特に彼が得意とするのはその顔からは意外に思える体を張った笑い。しかも筋力を生かしたアクロバティックな動きである。アクロバティックというとまずキートンを思い浮かべるが、バスター・キートンのアクロバットがスピードであるのに対し、ハロルド・ロイドのアクロバットはパワーである。

 この作品でも、地面からバルコニーに懸垂で飛び乗ったり、大男に上ったりとさまざまなアクロバットを見せる。もちろん今のアクション映画からみればおとなしいものだが、それでも彼の体が発するパワーは感じれるし、そのアクロバットを笑いにつなげるのもすごくうまい。

 サイレント映画の時代、言葉でギャグがいえない以上、笑いは動きで生まなければならなかった。キートンもそうだが常人離れした動きが笑いを生む。それは現在まで脈々と続く笑いの基本だといえるだろう。それはおそらくサーカスから派生したものだ。

 そう考えると、この時代を席巻した三大喜劇王の誰もがサーカス的な要素を持っているのだということがわかる。それは彼らの活躍したのが映画がまだ見世物であった時代だったということだ。そして活躍しながら彼らは映画に物語性やメッセージ性を取り入れ、映画が見世物からひとつの文化へと成長する一翼を担ったということなのだろう。

 チャップリンは特にその傾向が強く、現代に至るまで評価が高いが、バスター・キートンにもこのハロルド・ロイドにもその傾向は見られる。しかも彼のギャグは今見ても笑える。さすがは喜劇王だと納得。

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