Pineapple Express
2008年,アメリカ,112分
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
原案:ジャド・アパトー、セス・ローゲン、エヴァン・ゴールドバーグ
脚本:セス・ローゲン、エヴァン・ゴールドバーグ
撮影:ティム・オアー
音楽:グレーム・レヴェル
出演:セス・ローゲン、ジェームズ・フランコ、ダニー・R・マクブライド、ゲイリー・コール、ロージー・ペレス

 召喚状の配達人をしているデールは無類のマリファナ好き。馴染みの売人のソールから“パイナップル・エクスプレス”という珍しいマリファナを手に入れ上機嫌で仕事に出かけるが、そのソールの元締めだというテッド・ジョーンズのところに召喚状を届けに行くと運悪く殺人を目撃していしまう。パニックに陥ってすいかけのマリファナを捨ててきてしまったデールはそこから足がつくと思いソールのところに駆け込むが…
 カナダの若手コメディ俳優セス・ローゲンが脚本・主演を務めたクライム・コメディ。ハイテンポな展開と小ネタがケッサク。

 このコメディは相当面白いと私は思う。もちろんコメディというのは見る人によって面白いと思えるかどうかが大きく変わるし、見る時期や気分によってもその面白さは大きく左右されてしまう。しかしこの作品は名作とは言わないまでもかなりの人が笑える作品だろうと思う。

 この作品の主人公デールはマリファナが好きなだけの無害な男。しかしたまたま殺人を目にしてしまって危険な男たちに追われる羽目になる。逃げる相棒となるのは売人のソール。ふたりして間抜けなことを繰り返し、どんどん追い詰められていってしまう。しかし、この2人が善人だというのがこの映画のミソである。善人というよりはガキなのかもしれないが、私欲のために相手を裏切ったりすることはなく、ある意味ではロマンティックな男たちなので安心してみることができる。そんなキャラクターの構築の仕方がとてもうまい。

 そしてもうひとつ面白いと思ったのは私たちがアクション映画を見ているときに「ほんとかよ!」と思うような突込みどころを見事に笑いにしているというところ。カーチェイスをしているときに何かの理由で前が見えなくなり、フロントガラスを蹴破るというのはアクション映画で時折見られる光景だが、この作品でもそれをやろうとして足がガラスに突き刺さって抜けなくなってしまう。運転しながら見事に割って運転し続けるよりも、そのようが「さもありなん」という感じがする。しかも足を突き刺したまま運転している状況を外からも撮影しているその画が笑える。

 ほかにもそんな小ネタが結構ある。そしてそのたびに間抜けな画で観客を笑わせる。このノリが映画ファンの心をくすぐる。

 下ネタも満載だが、そんなに下品なものではなく、大人なら笑い飛ばせる類のもの。2人のガキっぽさを演出するのに欠かせない要素ともいえるので、あって正解。ただ劇場公開されればPG12くらいにはなっただろうという感じはする。

 この主演のセス・ローゲンはカナダ出身のコメディ俳優。16歳で「フリークス学園」というTVシリーズに抜擢されたが、予定放送回数を終えることなく打ち切りとなる。しかし『ボラット』のサシャ・バロン・コーエンの「Da Ali G Show」に脚本家として参加、2006年には『40歳の童貞男』で映画デビュー。2007年の『スーパーバッド 童貞ウォーズ』では脚本にも参加した。

 この『スモーキング・ハイ』は「フリークス学園」のプロデューサで『40歳の童貞男』の監督でもあるジャド・アパトー、「Da Ali G Show」の共同脚本家であるエヴァン・ゴールドバーグとセス・ローゲンの3人で原案から作り上げた作品である。この3人の誰しもが決して有名とはいえないが、これからヒットメイカーになっていくのではないかという予感がする。

 この作品のセス・ローゲンは非常にうまいと感じさせる。面白いというよりはうまい。すごく普通な感じなのでシリアスなシーンも演じることができるのに、瞬発力があって笑えるシーンでは面白さが爆発する。『40歳の童貞男』という映画はあまり面白くなかったが、主人公の同僚を演じていたセス・ローゲンのことは記憶に残っている。

 ハリウッドのコメディ映画にはその時代時代にスターが生まれる。このセス・ローゲンがスターになるかどうかはわからないが、脚本もかける器用さがあるから、近い将来アダム・サンドラーのような存在にはなるだろうと思う。

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