Aftermath
2008年,ドイツ,87分
監督:クリストファー・ロウリー
脚本:スティーヴ・ミルトン
撮影:フランク・ヴィラカ
音楽:クリストファー・デトリック
出演:マイク・マッカーリー(声)

 今から1分後に全世界の人類が消滅したとしたら… 人類のいなくなった世界では数時間後に電力が止まり、動物が自由を得る。しかし同時に汚染物質や原子力発電所などは危機を招きうる…
 緻密な理論とCG技術によって人類消滅後の世界をシュミレートしたドキュメンタリーというかなんというか。

 「今突然人類が消滅したら」というまったくもってありえない前提ではじまるこのドキュメンタリーはもやはドキュメンタリーではないわけだがでもまあ劇映画ではないわけで、一応ドキュメンタリーの範疇に入れておく。

 この映画のよさは前提が完全にありえないために、どのような結果になってもそれはあくまで想像上のことでしかないということが明らかになっている点だ。この作品は決して人類に警句を発しているわけではない。環境をテーマにしたドキュメンタリーというとどうしても見ている人を脅かすような警鐘になっている場合が多いが、これはそうではないということだ。

 見ている人はただ淡々と変わり行く世界を眺める。発電所が止まり、電力が止まることで汚染物質が流れ出したり、最終的には原子力発電所が臨界を起こしたりする。しかし人間のいない地球の時間は止まらない。人間の作り上げた多くの構造物は時間とともに劣化し、崩壊する。動物や植物は生き残り、環境は変化し、気候も変わる。

 ただそれだけだ。退屈といえば退屈だが、この作品からはいろいろなことが考えられる。今人間が地球に対して行っていることの意味、もし“人類が消滅しなかった”場合にどうなるかという予測、人類が今の生活を維持するために必要としているさまざまなこと。そんなことが頭をよぎり、いろいろと考える。

 この作品のシュミレーションはおそらく正確ではないだろうし、もしかしたら実際にはまったく違うことが起きるのかもしれない。シュミレーションの対象となっている地域が北米とヨーロッパの一部に限られているのも納得がいかない。しかし、そもそもが絵空事なのだから、そんな欠点にいちいち目くじらを立てる必要はない。足りないものは自分の頭で補って自分なりにこの素材を消化して、自分のものにすればいいのだ。

 そして、CGの質もかなりのものだ。明らかにアニメーションにしか見えないところもあるが、かなりリアルなところもあって、人間のいない世界を創造するのに十分なリアリティを備えている。絵空事ではあるけれど、ありえないことではない。そんな感覚を与えてくれる。

 この作品が与えてくれる人類が唐突にいなくなった地球のビジョンが私に語りかけてきたのは、まだ取り返しはつくということだ。人類が突然消滅するという大変革がおきなくとも、私たちは自分達人類の存在を薄めて地球の回復力を助けることができる。今の地球を病気の人だと考えるなら、人類の消滅というのはいわば決定的な特効薬だ。副作用もあるけれど病をもとから絶つことができる。しかし人類としてはそんな特効薬を使われてしまっては困るわけで、それならば地球に寄生する生き物のとして、宿主がなるべく長生きでき、かつ自分達が快適にいられるようにできる限りのことをするべきだ。そんなことを私は思ったが、果たして皆さんはどうでしょうか?

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