| クレージーキャッツがスクリーンで活躍するのは60年代に入ってからだが、クレージーキャッツ(正式には「ハナ肇とクレージーキャッツ」)が結成されたのは1956年で、ハナ肇や犬塚弘はそれ以前から前身である「キューバンキャッツ」で活動していた(萩原哲晶もそのメンバーの一人であったが、クレージー結成時に作曲に専念するために脱退、クレージーのほとんどすべての曲を作曲している)。しかも、クレージーの“顔”である植木等が参加したのは57年ということもあり、いったい何をもって10周年というのかはよくわからないのだが、まあともかくおめでたいということで東宝としてはかなり力の入った作品になっている。
もちろん、基本的にはいつものクレージーものと変わらない。C調男の植木等が主役で、ヒロインには団令子、そこにハナ肇と谷啓が絡んできてドタバタが展開されるという感じ。ただいつもとちょっと違うのは悪役に越路吹雪を起用し、クレージーのほかのメンバーの活躍場面が多いというところ。さらにザ・ピーナッツや森繁久彌もゲスト出演して盛り上げる。クレージーと森繁といえば当事の東宝喜劇の2枚看板、ゲスト的なものとはいえこの2者がそろって出演するというのは珍しい。
そして、クレージー映画としてこの作品が面白いのはなんと言っても越路吹雪の存在だ。多くのクレージー作品は植木等が突出して、他はみんな脇役という感じになるのが常だ。この作品でももちろんもっとも存在感があるのは植木等だが、越路吹雪の冷たさが植木等の底抜けの明るさと見事な対比になってそこにいい緊張感が生まれている。偉大なるマンネリも続けば飽きるもので、そこにこういった緊張感が加わると作品がぐっとしまる。越路吹雪は役者としてはそれほど多くの作品に出ているわけではないが、出れば存在感を示した。もちろん本職は歌手なのだが、もっといろいろな作品に出て欲しかったと思う。
クレージーキャッツでは谷啓と犬塚弘が存在感を見せている。谷啓は今回は歌のシーンまであるし、いつもに増して活躍し、さらにいつもはちらりとしか出てこない犬塚弘もハナ肇よりもいい役者であることを示しているように見える。このふたりは今も存命で共に役者として活躍しているわけだから、当たり前なのかもしれないが、犬塚弘の活躍場面はもっとあってもよかったと思う。
今から見ると、なんと言っても目を引くのは円谷英二の特撮である。記録映像をはさむなど無理があると言わざるを得ない部分もかなりあるが、ミニチュアを作った特撮や、爆破シーンなどの迫力はやはりすごい。これまでのクレージー映画にはなかった緊張感がここでも生まれている。円谷英二は1954年の『ゴジラ』で名声を得て、63年にはすでに円谷プロを設立、66年には『ウルトラQ』『ウルトラマン』の放映が始まる。この作品を作った65年はまさに円谷英二と円谷プロに勢いがあった時代であり、多少の無理はあっても映像に迫力があるのもうなずける。
クレージーキャッツ結成10周年作品は、クレージーキャッツ以外の力によっていつものクレージー作品を上回るできの作品になったという印象だ。この後、クレージーキャッツはまたもとの作品作りに戻るわけだが、偉大なるマンネリもたまにはスパイスが欲しいということだ。
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