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日本一の色男

2007/9/13
1963年,日本,93分

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          ★★★--  
     
 
 女子高の教師光等は卒業式でふざけて学校をクビに。大手化粧品会社のローズ化粧品に現れた彼はセールスマンの面接にやってきた就職希望者たちに化粧品を売りまくり、見事セールスマンとして採用されてしまう。セールスマンとなった彼はあの手この手で女性をその気にさせて化粧品を売りまくるのだが…
  植木等の“日本一の男”シリーズの第1弾。東宝のクレージーものとしては4作目となるが、この“日本一の男”シリーズはあくまでも植木等のシリーズで他のメンバーは脇役でしか登場しない。
監督 古澤憲吾
脚本 笠原良三
撮影 小泉福造
音楽 宮川泰
    萩原哲晶

出演 植木等
     団令子
     草笛光子
     白川由美
     浜美枝
     淡路恵子
     ハナ肇
     由利徹
     谷啓

 

 

 

 

 

 言われてみれば植木等というのは男前である。クレージーキャッツの他のメンバーが登場しただけでおかしささえ漂うような個性的な顔立ちの面々なのと比べると、コメディアンとしては少々そんな顔立ちだ。いわゆる正統派の二枚目という顔で、今ではあまりもてる顔ではないけれど、昔はこういう顔がもてたのだと思う。しかも彼は声がいい。この作品ではいわゆるコミックソングではない歌も披露しているが、ムードのある低い声はムード歌謡を歌っても一流の歌手になれたのではないかという印象だ。
  まあいくら植木等が男前だと入っても芸者とかバーのマダムとかそういう手練手管を身に着けた女達が次々彼のとりこになっていくというのはさすがに無理があるということろ。しかしその無理を通してしまうのも植木等のすごいところでもあるのだ。
  植木等といえばなんと言っても「ガハハ」という馬鹿笑い、これで相手を煙に巻き、観客も煙に巻いてしまうのだが、この作品を診て気づいたのは、彼のもうひとつの武器は「逃げ足の早さ」であるということだ。C調男の植木等は相手をだますという役回りが多いわけだが、必ず相手がだまされたと気づく前にささっと逃げてしまう。そして次へ次へといってしまい、相手が忘れたころにまたやってくる。その逃げ足の速さは実はしっかりと映像として表現されているのだ。前かがみでそそくさと走り去る植木等は本当にすごく速い。

 この作品はクレージーキャッツが前面に出た作品ではないが、しかしやはりいろいろな歌が歌われていて「どうしてこんなにもてるんだろう」なんて歌う歌は非常にふざけていていいのだが、それでもやはり途中でちらりと使われる「無責任一代男」のインパクトにはかなわない。
  やはり植木等は無責任なことをやってガハハと笑ってはいそれまでよというのが一番面白いのだろう。
  しかし、そんな期待をしているから意外な展開の面白さも生まれる。この作品で光等は女達をだましながらたびたび何かに手を合わせる。そして、最後にそれが婚約者だったとわかるわけだが、ただの無責任、ただの金儲けではなく、目的・ドラマのある行動だったというだけで意外な展開になるのだ。これはこれで面白いし、その婚約者を迎えに空港に向かった等を何人もの女が追っていくその後の展開はどうなるのかと純粋に気になったりもする。
  クレージーキャッツものというのはやはり歌と植木等の飄々とした行動が生む笑いがメインではあるけれど、実は脚本もよく練られているものが多い。ただのドタバタ喜劇に終わらせず、ワンパターンに陥らない展開で観客をあきさせないのだ。だからこそ10年という短い時間で30本以上の作品を生み出し、ヒットを生むことができた。この作品の脚本家は若大将シリーズや社長シリーズ、『大番』などを手がけた名手笠原良三で、彼は“日本一の男”シリーズのうち5本を手がけているが、彼と田波靖男がクレージーものの2枚看板といっていいだろう。このころのシナリオ作家というのは本当に職人的にいいしごっとをするものだ。
  同じシナリオ作家、同じ出演者であるにもかかわらず観客をあきさせないという60年代の日本映画にあったパワーをこの作品とシリーズは私達に見せてくれる。だから、なんてことはない作品なのに、次から次へ見たくなってしまうのだ。