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1847    

ドゥ・ザ・ライト・シング

2006/11/6
Do The Right Thing
1989年,アメリカ,120分

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          ★★★.5星  
     
 
 ブルックリンの黒人地区、ムーキーはイタリア人のサルの経営するピザ店で働いている。37℃の猛暑の中、彼の仲間たちはひがなぶらぶらして何もしようとしない。
  ブルックリンのとある通りで起きる一日の出来事を描いたスパイク・リーの出世作。スパイク・リー自身が主役を演じてもいる。
監督 スパイク・リー
脚本 スパイク・リー
撮影 アーネスト・ディッカーソン
音楽 ビル・リー

出演 ダニー・アイエロ
     スパイク・リー
     ビル・ナン
     ジョン・タトゥーロ
     ジャンカルロ・エスポジート

 

 

 

 

 

 この映画は非常につらい映画だ。つらいと言ってものは物語が切実なものであるとか、主人公が悲劇的な目にあうというものではない。映画の体裁としてはコメディというか、他愛もない日常をつづったものに過ぎないのだが、そこに登場する人々を見ているのがつらいのである。
  その理由のひとつにはもちろん、これが人種差別を扱ったものであるということがある。黒人の街にあるイタリア人のピザ店と韓国人の雑貨店、そして同じ地区に同居するプエルトリカン。そこには単純な白人−黒人という差別構造ではない、アメリカの、特にニューヨークの複雑な人種構成が垣間見えるのだ。そして、物語としてはその複雑な差別構造が重要になってくるわけだが、それはあとの話としよう。
  この映画がつらいのは、ここに登場する黒人たちがみな自分勝手というか自分の利益ばかりを声高に主張するからだ。他人の言うことには耳を傾けず、ただただ自分の思うことを言う。この映画のエンドロールにはマーティン・ルーサー・キング牧師の言葉が引用され、「聞く人を持たない会話は独白でしかない」と書いている。そして、映画の途中では“市長”が若者たちに向けていった言葉に対して、「独り言を言ってるんじゃねー」というような言葉が返される。
  そして、繰り返される「言うだけで何もしない」という言葉、そこには黒人たちの行き場のない怒り、現状を打破するためには非常なエネルギーが必要だという現実に対する怒りと諦めが存在する。それが彼らの集団的な憎しみをはぐくみ、憎しみの悪循環が起きる。黒人は白人を敵視し、白人は黒人を敵視し、そこに更なる差別が生まれるのだ。
  この映画はそのような悲劇的な現実を包み隠すことなく示し、その解決策を示すことはできない。しかし、サルや市長、ジェイドは未来の可能性をわずかに示し、ムーキーもサルらとの関係からそんな未来へと一歩を踏み出しそうな可能性を感じさせる。しかし、未来はそう簡単には開けない。人間関係の構築という難しい未来より偏見や差別といったわかりやすいものに彼らは飛びつき、未来は遠のく。
  しかしもちろんスパイク・リーは未来に絶望しているわけではない。彼は映画の最後にマーティン・ルーサー・キングとマルコムXの言葉を並べて、考えるべき材料は示している。スパイク・リーはこの後も黒人の問題について映画で考え続けている。その意味でこの作品は間違いなく彼の道標のひとつであり、彼のフィルモグラフィーの中でも重要な位置を占めるものだ。
  そしてそれは同時に、映画を通して人種差別というものを考える際にこの作品を含めたスパイクリーの作品が欠かせないものであるということも意味している。決して楽しい作品ではないが、見れば何かが残る。考えなければならない何かが残る。そんな作品だ。