日本人なら誰でも知っている(と思う)忠臣蔵。なので、名前が大石、浅野、吉良、というだけで大体どういう話かわかってしまうわけだが、それを現代のサラリーマンに置き換えるとなると一体どうなることやら、という感じになる。しかも、この映画の場合は単純に置き換えるというのではなく、いろいろと工夫をこらして筋を練ってくるのだ。
ひとつは、惚れたはれたの話の多さ。中心にくるのは浅野社長の加代次との話だが、それ以外でも社長秘書の早野と専務の秘書で専務の運転手の妹の軽子、専務の息子の力と常務・大野の娘の小奈美と3組の恋愛模様が描かれる。その恋愛模様が主プロットである赤穂産業を中心とする陰謀に絡んでいくわけだが、それによってこの映画はかなり現代的な印象を与えることになる。
主プロットのほうは登場する人物も限られ、一種の企業陰謀ものの形式をとるのだが、その周辺では群像劇のごときものが繰り広げられ、それによってこの豪華キャストが生きるし、サラリーマン映画100本記念お正月興行というお祭り騒ぎにもフィットするし、そして何よりも本質的にコメディであるこのサラリーマン映画の主題にフィットするようになる。
この映画はコメディというほどに笑う場面があるわけではないが、喜劇であることは確かで、脇役に配されるエレベーターガールやらがこそっと面白いことをしたりもする。
そんな中でもやはり、池辺良や三船敏郎はどうもシリアスな雰囲気を醸し出してしまう。しかし、それは映画の雰囲気と外れるというものではない。彼らのような2枚目のスーパースターを起用することで、主プロットはシリアスな物語にしていくのである。
そして、そのシリアスな物語と喜劇的な面をつなぐのが森繁である。森繁は最初はどうも喜劇の側にいるように見えるが、しかし「大石」という名を背負っている以上、彼が吉良に対する復讐劇の主役となることは間違いないのだ。しかしそれでも、大石はなかなか立ち上がらない。その間の持たせ方が非常にうまい。何を考えているかわからない大石のキャラクターが展開を読みづらくするこのあたりがこの映画のオリジナルなところであり、さすがにこれまで100本も作ってきたサラリーマン映画らしいところである。
忠臣蔵、忠臣蔵、というところがどうしても気になってしまうが、やはりそれ以前にこの映画はサラリーマン映画である。忠臣蔵であるにもかかわらず、忠義やらなにやらのウェットな感情は持ち込まず、みなが個人的な感情で動くという、カラリとした高度成長期らしいモダンなドラマになっているのだ。
なんだかわからないけど面白いなぁ…
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