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ヘヴン

2003/7/15
Heaven
2002年,ドイツ=イギリス=アメリカ=フランス,96分

 
            
     
 
 冒頭はヘリコプターの操縦シュミレーション、場面は変わって女が手製の爆弾を持ってビルに行き、ある会社の会長のオフィスに時限爆弾を置いて出てくる。そして、ビルの前の公衆電話から憲兵隊に電話をかけ、爆弾を仕掛けたことを告げ、フィリッパと名を名乗った。しかし、爆弾は掃除婦に回収され、一緒にエレベータに乗っていた親子もろともに爆破してしまったのだった。あっさり捕まったフィリッパはその事実を知って…
 ポーランドの巨匠キエシロフスキーの遺稿となった脚本を『ラン・ローラ・ラン』のトム・ティクヴァが映像化した。物語はキエシロフスキーらしいナイーブな恋物語。
監督 トム・ティクヴァ
脚本 クシシュトフ・キエシロフスキー
    クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
撮影 フランク・グリーベ
音楽 アルヴォ・ベルト

出演 ケイト・ブランシェット
    ジョヴァンニ・リビシ
    レモ・ジローネ
    アレッサンドロ・スペルドゥーティ
    マッティア・スブラジア

 

 

 

ヘヴン 特別版

 

「ヘヴン」「ウィンタースリーパー」 トム・ティクヴァ監督ツインパック

 

 

 
 冒頭にヘリコプターのシュミレーション画面が入るというのも、なかなか工夫が効いている。これをはじめとしてティクヴァはさまざまな工夫を映画に盛り込む。それはおそらくキェシロフスキーの脚本とスタイルを尊重してなのか、全体的に抑え目の映画作りになっていて、そこに自分なりのスタイルというものを盛り込もうという意欲がそうさせているように思える。
 『ラン・ローラ・ラン』を見る限りではティクヴァというのはある種のアイデアマンであるように見える。それに対して、キエシロフスキーというのはあくまで普通に映像を作っていきながら、そこに非常な深みを与える監督だ。ティクヴァとしてはキエシロフスキーが作るであろう映像の深みに自分が到達し得ないことを意識しながら、そこを自分のアイデアで補おうとしているのだろうと思える。
 なので、全体的に見ると少しうまく行っていない感じがしなくもない。いろいろと工夫をして色を出そうとしているがために物語が薄っぺらになる。局面局面は非常に魅力的なシーンが多いけれど、全体を見るとたいした話ではないというか、登場人物の内面を描ききれていないという感じになる。それは結局キエシロフスキーの深みにティクヴァが届かなかったということで、仕方がないということにはなるけれど、何か物足りなさが残ることは確かだ。
 フィリッポとフィリッパと内面的なつながりや感情のもつれ、そのあたりがうまく描かれると映画としてはすばらしいものになったんじゃないかと思える。

 しかし、いいシーンもたくさんあって、ラストシーンなんかはその典型。最初のシーンとの結びつきも工夫がされていて、とても印象に残るシーンとなった。こんな印象に残る映像の作り方こそティクヴァの本領なのだろう。序盤のエレベータの爆破のシーンもとてもいい。緊張感をもたせながらも、爆破の表現自体は抑え、音も小さめ、余韻が残る。
 冒頭のシュミレーションのシーンから、一貫して浮遊感が漂うのも印象的だ。実際に空撮を多用しているのもあるし、クレーンを使うことも多い。そして音声をちょっとくぐもった感じにして、出来事を遠くのように思わせる。しかし、主人公たちに肉薄するようなシーンもある。そのようにして局所局所のよさと全体的な雰囲気のよさというのがこの映画にはあって、特別面白いというわけではないけれど、「いい映画だなぁ」という感じはある。