1976年,日本,85分
監督:古沢憲吾
脚本:松木ひろし
撮影:鷲尾馨
音楽:広瀬健次郎
出演:由美かおる、岡崎友紀、沢田雅美、志垣太郎、磯野洋子

 浅野夫婦が校長(妻)と理事長(夫)を勤めるとある服飾学校が企業のバックアップでファッションイベントをすることにした。しかし、その学校のオーナーである実業家の吉良はそのイベントに自分の名前が入っていないことに腹を立て、スポンサーを撤退させ、イベント開催を条件に校長に言い寄ったが失敗し、イベントをつぶしてしまった。それを聞いた理事長は自棄酒を飲んで車を運転し、事故を起こして死んでしまう…
 監督の古沢憲吾は「無責任シリーズ」や「若大将シリーズ」の監督を務めてきたコメディの名手。これが遺作となった。お正月映画ということで、スターというか有名俳優がこぞって出演しているのも魅力。

 映画のすべての要素が「くだらなさ」に還元されてゆく。
 作られた当時の意図はわからないけれど、今見るととにかくくだらないことに一生懸命に見える。これは一種のお祭りなのだ。とにかくスターというかスター一歩手前ぐらいのおなじみの顔が多数出演しているのがまずこれがお祭り騒ぎであるという何よりの証拠だ。それに加えて、物語の下敷きが忠臣蔵というのもなんだか、お祭りだか恒例行事だかの匂いがする。
 などといっていますが、要するに言いたいのは「お祭り!」ということで、つまり面白ければいいということ。で、面白いのかといえば、面白い。くだらないと面白いとは必ずしもイコールでつながるわけではないけれど、徹底的にくだらない映画というのは概して面白いものが多い。

 ただ、この映画の場合、あまりにくだらなすぎる。というのは、普通の徹底的にくだらなくて面白い映画というのは映画を通して一貫したくだらなさを持っている。つまり傾向というか、全体が一つのネタになっていて、その中でいろいろとふざけて見せる。しかしこの映画の場合は、とにかく小さなくだらないことを集め集めて、その小さな物事をくっつけて映画にしている。たとえるならば、コントを演るお笑いコンビではなく、とにかくダジャレを連発する芸人集団という感じ。
 そのようなくだらなさだから、弱いといえば弱い。ずっと一貫してくだらないことは確かなんだけれど、ずっと面白いかといえばそうでもなくて、結構ムラがある。見る人による個人差はもっとあるだろう。とにかく勢いで持っていくので、笑って終わることはできる、素人はだませる、でも玄人の目はごまかせんぞ、フッフッフッフッフ。みたいな感じである(わかるかな?)。しかし、一方で出ている人たちや細かいネタをチェックしたいというマニア心もくすぐる。
 このマニア心というのは、今見ているからわいてくるのであって、みている当時はそのような観客層はなかっただろう。今となっては「なんじゃそりゃ」という笑いのネタになる冒頭の水前寺清子の歌も、歌手の八代亜紀さんとして登場する八代亜紀も、当時は一つの娯楽として映画の中に一つの役割を持っていたのでしょう。そんな時代性というものをつとに感じる映画でした。

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