Love in the Afternoon
1957年,アメリカ,134分
監督:ビリー・ワイルダー
脚本:ビリー・ワイルダー
撮影:ウィリアム・C・メラー
音楽:フランツ・ワックスマン
出演:オードリー・ヘップバーン、ゲイリー・クーパー、モーリス・シャヴァリエ

 パリで浮気調査をする私立探偵のシャヴァス、旅先から戻ってきた夫に結果を報告すると、夫はその相手の男を殺そうとピストルを持って出て行く。それを聞いていた私立探偵の娘アリアンヌは殺されそうな男フラナガン氏の身を案じ、ホテルや警察に電話するがとりあってくれない。そこで直接ホテルに行くことにするが…
 パリを舞台に繰り広げられるオードリー&ワイルダーのラブ・コメディ。オーソドックスな作りながら、オードリーの魅力が際立つ一作。

 なんといってもオードリー。そもそもオードリーなので、画面にいればそれだけで華やかなのだけれど、この映画はその輝きがさらにいっそう増している感じ。そのあたりがワイルダーのうまさなのか。ワイルダーは職人的にオードリーの魅力を引き出していく。
 まずチェリストという設定がとてもよい。細身のオードリーに大きなチェロケースを持たせる。そしてチェリストといえば、ロングスカートかパンツルック。特にパンツのスタイルがとても新鮮でいい。ショートカットにパンツルック。なるほどね。
 というわけでどこを切ってもオードリーなわけですよ。あとは脇役のミシェルと「夫」と楽団がなかなかいいキャラクターで、この脇役たちによって物語全体が面白くなっているという気はしますが、それもやはり結局はオードリーに行き着くわけです。
 そして、オードリーで一番すごいと思うのはやはりその表情。フラナガン氏と会っているとき、気丈なふりをして話すその表情。そして、大きな目からは心の中の呟きがこぼれ落ちそう。
 というわけで、2時間強の間私の目にはオードリーしか入ってこず、映画の感想といわれてもオードリーのことしかかけないわけです。オードリーがすばらしいのか、ワイルダーがうまいのか。両方だとは思いますが、ワイルダーの役者の生かし方のうまさは今で言えばソダーバーグに通じるものがあると思います。念入りに舞台装置を組み立てて、いかに役者を生かすかということを常に考えている。そんな気がします。それが一番端的に出ているのはこの映画ではチェロだと思いますね。

 あと興味を魅かれるところといえば、パリの風景。フラナガン氏が滞在しているのがリッツホテルの14号室で、映画もそのリッツホテルを覗き込むシャヴァスのモノローグから始まり、リッツホテルを中心に展開されるといってもいい。今から見れば少し昔のパリの風景は、いまも「憧れ」の対象であるのだと思った。

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