Ghoat World
2001年,アメリカ,111分
監督:テリー・ズウィコフ
原作:ダニエル・クロウズ
脚本:ダニエル・クロウズ、テリー・ズウィコフ
撮影:アフォンソ・ビアト
音楽:デヴィッド・キティ
出演:ゾーラ・バーチ、スカーレット・ヨハンソン、スティーヴ・ブシェミ、ブラッド・レンフロ

 イーニドとレベッカの仲良し二人も高校を卒業。しかし、他の仲間とはなじめない変わりものの二人組みは。卒業した後も変わらずふらふらしていた。そんななか、レベッカはコーヒーショップに勤め、まともな道を歩み始めるが、イーニドはいたずらで引っ掛けた男イーモアのことが気になってしまう…
 アメリカで人気のコミックの映画化。他のティーンズ・ムーヴィーとは一線を画した独特の雰囲気がとてもいい。スティーヴ・ブシェミを起用したのもかなり効果的。

 このビジョンはとてもいい。イーニドはとてもいい。これがアメリカの10代の女の子に受けるというのがどういうことが考えてみる。アメリカのティーンズといえば典型的に言えば「ビバヒル」の世界に憧れるというイメージがある。それは他のいわゆるティーンズ・ムーヴィーを見てもそう。しかし、もちろん実態はそんな華やかなものではなく、憧れは憧れだ。しかししかし、もちろんみんながみんなそれに憧れているわけではない。それには気づくのだけれど、映画の世界では真面目少女のように例外として描かれていても、本当はみんなと同じ憧れを持っているという描かれ方をすることも多い。
 そんな映画的環境の中で、完全に例外であるイーニドはとても魅力的だ。型どおりのティーンズたちから見ればクィアなやつに過ぎないけれど、そのものの見方には非常な強さがあり、ゆるぎない自己というか、揺らぎはするけれども決してプライドと自信は失わないという力を持っている。
 男は誰もがレベッカのほうに声をかけるということ。イーニドがシーモアの魅力に気づき、彼を想うようになること。この対比がイーニドと他の世界との隔絶を表しているのだろう。その壁を壊すのか、越えるのか、それとも壁のこちら側にとどまるのか。壁を壊すには自分の中のさまざまなことを犠牲にしなければならず、壁を越えようとすれば、向こう側にはそれを邪魔する人たちがいる。一緒に壁のこちら側にとどまってくれる仲間を求めても、それはなかなか見つからない。いたずらやとっぴな行動で時々壁に小さな穴を穿つだけ。
 そのように描かれるイーニドは私にはすごく魅力的なキャラクターにうつる。イーニドにとってシーモアがヒーローであるように、イーニドを尊敬できるヒロインと見よう。
 映画はといえば、細部へのこだわりが非常に伝わってくる。それはキャラクターと映画空間のつくりへの気の使い方の表れなのだろう。イーニドの部屋の一つ一つの小物と、とても病院とは思えないつくりの「Hospital」と書かれた病院。それら、違和感を生じさせるものどもがこの世界を形作る不可欠な要素である。そのひとつひとつのものへのこだわりがとてもよい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です