Ie Amiche
1956年,イタリア,104分
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
脚本:スーゾ・チェッキ・ダミーコ、アルバ・デ・セスペデス
撮影:ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ
音楽:ジョヴァンニ・フスコ
出演:エレオノラ・ロッシ=ドラゴ、イヴォンヌ・フルノー、ヴァレンティナ・コルテーゼ

 1952年、ローマからブティックの支店開設のため生まれ故郷のトリノへとやってきたクレリアはホテルの隣室の客ロゼッタの自殺未遂に出くわす。そこから仲良くなったロゼッタのともだちモミナらと仲良くなった。またクレリアは店の設計技師の助手カルロに心魅かれもしていた。
 複雑な人間関係が交錯するアントニオーニには珍しい通俗劇。監督としては3作目の長編となる。ストレートなドラマとしてみることができるが、その中にアントニオーニらしさも垣間見れる作品。

 一見ほれたはれたの通俗劇で、イタリア版「ビバヒル」みたいな感じだけれど、そこはアントニオーニで、決してハッピーな展開にはならず、痛切な出来事ばかりが起こる。結局のところ人と人との心はつながらないというか、理解しあえることなどはないんだとでも言いたげで、ちょっと気が滅入ったりもしました。 なんといってもロレンツォっていうのが、ひどい男ですね。映画を見ながら、「卑劣極まりないね」などとつぶやいてしまいました。
 でも、まあ話としてはわかりやすく、まとまりもついているし、アントニオーニにしては見やすいといえるかもしれません。それでも物語に含まれるそれぞれの話は徐々に散逸していき、決してひとつにまとまることはないということはあります。それがアントニオーニ。ひとつの物語へと集中する観客の視線を拒否することによって成り立っている映画という気がします。その物語から視線をそらされたところで、気を引かれたひとつの要素は音楽。この間の「欲望」のハービー・ハンコックの音楽もよかったですが、この映画にさりげなく含まれる音楽もかなりいい。それを一番思ったのはモミナのアパートに女たちが集まったときにBGMとしてかかっている曲。さりげなくセンスのいい曲が流れ、しかしそれも頻繁ではないという控えめな感じ。いいですね。
 ジョヴァンニ・フスコはアントニオーニ作品の多くを手がけているので、ほかの映画を見ても音楽のセンスのよさを感じられていいですね。

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