Le Gout des Autres
1999年,フランス,112分
監督:アニエス・ジャウィ
脚本:アニエス・ジャウィ、ジャン=ピエール・バクリ
撮影:ローラン・ダイヤン
音楽:ジャン=シャルル・ジャレル
出演:アンヌ・アルヴァロ、ジャン=ピエール・バクリ、アニエス・ジャウィ、アラン・シャバ

 ムッシュ・カステラは小さくも大きくもない会社の社長。新たな契約に際して、保険会社にボディガードをつけられた。さらに英語の教師までつけられてしまう。しかし、その英語教師が姪の出ている映画に主演しているのを見て、いたく気に入ってしまった…
 監督は自身も出演している脚本家/女優のアニエス・ジャウィでこれが初監督作品となる。全体としてはコメディタッチの落ち着いた感じ。大人な女の人にはよいかもしれません。

 ちょっと毛色の変わったラブ・コメディのように見えて、なかなかそう一筋縄でもいかない感じ。まず、物語としてふたつの焦点があるというのが面白い。題名からするとカステラさんの話に終始するのかと思いきや、結構マニーとボディガードたちの関係に割かれる時間もかなりある。かといってふたつの話がそれほど絡み合っていくわけでもなく、基本的には別々なものとして展開してゆく感じ。このひとつのものとして捉えがたい感じはこの映画全体に付きまとう。ひとつの中心を作ってそこからすべてを俯瞰するのではなく、さまざまな側面から物を眺めてぼんやりと浮かび上がってくる像を提供するという感じ。カステラさんの奥さんのキャラクターもひとつの側面として描かれている。この奥さんのキャラクターの描き方は絶妙で、私なんかは最初に登場したときからいらいらさせられっぱなし。
 マニーを演じている女優さんと監督が同じ人と気づいたのは映画を見終わった後だったんですが、そういわれるてみればこの奥さんの描き方にも、最終的に焦点を結ばないプロットの作り方にも納得がいく感じ。カステラさんと同じ年代のおじさんの監督が作ったんじゃこうは行かないはず。女性の女性に対する視点というものを感じます。
 さらには、一つ一つの場面が宙ぶらりんな感じで終わる感触といい、頻繁に出てくる男二人で構成される画面のバランスといい、なかなかのものなのでこれからちょっと注目したい監督です。この男二人の画面はなかなか気になります。サイズがシネスコなので、人物を二人配置するのはなかなか気を使うと思うんですが、この監督はあっさりと横に二人並べてしまう。その不思議な距離感がいいと思います。

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