1960年,日本,128分
監督:小津安二郎
原作:里見弴
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:厚田雄春
音楽:斎藤高順
出演:原節子、司葉子、岡田茉莉子、佐分利信、笠智衆

 旧友三輪の7回忌に集まった3人の友人と残された三輪の妻子は寺を後にし、料理屋で語る。その席で三輪の娘百合子のお婿さんを世話しようと話になるが、話はなかなかうまく進まず…
 小津は60年代に入っても親子の物語を撮る。原節子が娘役から母親役に回り、全体にモダンな感じになってはいるものの、本質的な小津らしさは変わらず、その混ざり加減がとても心地よい感じ。

 60年代、オフィス街、銀座、BG(ビジネス・ガール)とくると、どうしても増村保造の世界を思い浮かべてしまいますが、これは小津。なので、物語の展開もやはり小津。増村ならば、秋子を巡ってドロドロとしたり、いろいろあると思うのですが、小津なので最終的に母娘の物語になります。そして相変わらずカメラ目線で正面を向き、独特の節回しで「ねぇ~」と言う。
 小津の「ねぇ~」が好き。小津映画の女性たちは「そうよ」と「ねぇ~」だけでいろいろなことを語る。大体は女性同士が視線を交わしあいながら、なんだか企み気に「そうよ」… 間 …「ねぇ~」という。ついつい微笑んでしまうその光景が好き。小津映画を巨匠巨匠と構えて見るよりも、「ねぇ~」といいながら微笑んで見たい。この映画はそんな見方に最適です。
 この映画を見ながら60年代に暮らしたいと思いました。まあ無理ですが。増村を見ていてもそうですが、モーレツな生活の中に何か味わいのようなものがあるとは思いませんか? 何かかが新しくなっていく時期というか、古いものと新しいものが混在している時期という感じ。そして娯楽の中心は映画で毎週毎週こんな映画が封切られる。少々不便でもそんな生活って素敵だと思いますね。
 だんだん映画の感想ではなくなってきていますが、気にしない。私は普段歩くのが好きで、ふらふらと東京の町をさまよっているのですが、大通りを歩くのは楽しくない。それよりも細い道をふらふら歩く。それでも東京はどの道もしっかりと舗装され、つまらない。60年代の映像を見ていると、銀座ですらまだ舗装されていないところがあったりする。そんな道を歩くのは快適ではないかもしれないけれど楽しいことのような気がします。これは生きたことがない時代へのノスタルジー。現実は違うと思うけれどノスタルジックに見ることがとても楽しいのでいいのです。
 そうなったら、このメルマガもガリ版で作るしかないかしら。それもいいかもね。

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