Vengo
2000年,スペイン=フランス,89分
監督:トニー・ガトリフ
脚本:トニー・ガトリフ
撮影:ティエリー・ブジェ
音楽:アマリエ・デュ・シャッセ
出演:アントニオ・カナーレス、ビリャサン・ロドリゲス、アントニオ・ペレス・デチェント、フアン・ルイス・コリエンテス

 アンダルシアの小さな町で開かれるパーティー、それを主催するカコ。彼は体の不自由な甥ディエゴを溺愛し、娼婦の世話までしようとする。しかし陽気に振舞う2人はカコの娘ペパの面影を忘れることができなかった。
 途切れなくフラメンコの音楽がかかり、情熱的に迫ってくるこの映画は「観る」というより「浴びる」のがいい。

 映画を「浴びる」。圧倒的に迫る音楽は冷静に映画を見せてはくれない。ひたすらに降り注ぐ音楽と映像を浴び、その中に浸り、それによって押し付けられる感情に浸る。否応なく感じさせられる怒りあるいは苦悩にもいらだつよりは身を任せ、映画が押し進むその方向に押し流されていくことで何とか映画を消化できる。
 連続するクロースアップや(過度といっていいほどに)雄弁にものを語る登場人物の表情が暴力的ではあるけれど確実に見るものの感情をコントロールする。
 という映画です。確かに力強いけれど、ちょっと暴力的過ぎるかなという気がします(内容ではなく映画として)。そして音楽の映画ということで、さすがに音楽は素晴らしいですが、演奏シーンはすごく長い。兵隊が寄ってくるところのようにちょっとまわりにエピソードを加えたり、カコの夢と現の間のようなシーンみたいに映像的な工夫がなされているとその長さも苦にならないのだけれど、ひたすら演奏を映しているシーンはちょっと長すぎるかなという気はしました。
 音楽に浸って忘我したいという気分にはぴったりかもしれません。プロットもそれなりに練られていたし。やはりガトリフは自分の世界をしっかりと構築しているので、着実にいい作品を作ります。大きくはずすことはない。この映画はガトリフとしてはちょっと平凡な映画になってしまった感も無きにしも非ずですが、これが彼の世界なのでしょう。

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