Khane Doust Kodjast
1987年,イラン,85分
監督:アッバス・キアロスタミ
脚本:アッバス・キアロスタミ
撮影:ファラド・サバ
音楽:アミン・アラ・ハッサン
出演:ババク・アハマッド・プール、アハマッド・アハマッド・プール、ゴダバクシュ・デファイエ

 主人公の少年アフマドが学校から帰り、カバンを開けるとノードがふたつ。その日も遅刻して宿題を忘れ、先生に叱られたばかりの隣の子のノートを間違えて持ってきてしまったのだ。やさしい少年アフマドは彼を探して遠くの村まで走ってゆく。無事にノートは帰すことができるのか?
 少年を描かせたら世界一のキアロスタミ監督作品の中でも最も少年が輝いてる作品。素朴にして重厚、キアロスタミ映画のひとつの到達点であるこの作品は映画史に残る名作。

 すでに古典という感じすらするイラン映画の名作だが、新鮮さを失うことはない。この作品以後についても作品が作られ、三部作のようになっているが、何度もアフマドが駆け上がり駆け下りるジグザグ道から名づけられた「ジグザグ三部作」と呼ばれる。
 このジグザグ道の反復がこの映画の最大のミソで、同じ道を上り下りしているだけなのに、徐々に心細くなってゆく少年の心理が手にとるようにわかって心揺さぶられる。この反復という要素はキアロスタミの映画ではよく用いられる要素で、反復の中に生じる微細な変化がその反復をする人の心理を言葉以上に如実に表現する。この映画でいえば、アフマドの足取りが重かったり軽かったり、うつむいていたり正面をじっとみつめていたり、その変化がとても面白い。

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