1960年,日本,72分
監督:鈴木清順
原作:一条明
脚本:星川清司
撮影:萩原泉
音楽:三保敬太郎、前田憲男
出演:川地民夫、禰津良子、奈良岡朋子、芦田伸介、吉永小百合

 街でちょっと悪い遊びをし、バーにたむろするハイティーンの若者達、そんな若者達のひとり次郎は母に限りない愛情を持っていたが、日ごろから反感を持っていた母の情夫である南原が理由で家を飛び出してしまう。
 物語としては特別どうということはなく、物語の前半60分は清順らしいと関心はするものの感動というほどではないけれど、最後の10分は息が止まるほど素晴らしい。
 まだまだ新人の吉永小百合もちょい役で出演。

 情夫がどうとか、若者がどうとか、戦後がどうとか、そういった安っぽいメディアにいたるまでありとあらゆるところで語られてきた問題を、あえて取り上げているのだけれど、この映画の本質はそんなところにはない。
 冒頭近くの交差点のシーン、カメラは平然と幹線道路のトラフィックの中に平然ととどまる二人の女を平然と俯瞰からとらえる。その画があまりに平然としていることに戸惑う。日常的ではあるけれど、映画では実現しにくいようなシーンがさりげなくちりばめられる。
 最後の10分になると、そのようなシーンも勢いを増し、それにもまして美しい構図と力強いカメラワークが引き立つ。その最後の10分間の始まりは、敏美がオープンカーの後部座席にうつ伏せで乗り込むシーンだろう。その非日常的な、しかし美しい構図にはっとし、そこから先は目くるめく世界。
 ホテルの一連のシーンはまさに圧巻。見てない人はぜひ見て欲しい。この1シーンに1500円の料金を払ったって惜しくはない。そのくらいのシーンでした。多くは語るまい。アップのものすごい切り返しと、足によって切り取られた三角形と、緊迫したシーンに突如入り込んでくる笑いの要素。見た人はそれですべてが分かるはず。

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