Cien Nin~os Esperando un Tren
1988年,チリ,58分
監督:イグナシオ・アゲーロ
撮影:ハイメ・レイエス、ホルヘ・ロート
出演:チリの子供達

 チリのとある村。教会の映画部門の担当者が子供たちのための映画教室を開く。最初の授業、子供達に映画を見たことがあるかと聞くと、ほとんどの子供はないと答えた。そんな子供たちに映画をその成り立ちから楽しく授業する様を描いたドキュメンタリーの秀作。
 チリという国がどうとか言うよりは、子供たちと一緒に映画を純粋に楽しむことができる楽しい作品。

 この映画は楽しい。映画というものがどのように成立し、映画史がどのように発展してきたのかを知らない人はもちろん、それを知らない人もそれを体験するということは楽しい。子供たちが純粋に驚きを表したように単純に驚く。
 この映画はスタイルとしては非常にオーソドックス。最初教室を上から撮ってバッハが流れるところなどは、「おお、いかにもドキュメンタリー」という感じ。しかし、内容としてはインタビューがある以外はあくまでも被写体に介入することなくただみつめているだけというところは好感を持てる。ドキュメンタリーで最悪なのは、中途半端に被写体に介入し、味方であるような顔をしながらプライヴァシーを踏みにじるもの。生活すべて浸りきるほどの覚悟がないのなら被写体にはまった干渉しない方がいい。
 そんな意味で、この映画の距離感は好感をもてる。インタビューの仕方もうまくて、両親と一緒に子供がインタビューを受ける場面などは子供の自尊心をくすぐりながら効果的に教室の意味のようなものを引き出している。
 本当はチリという国、あるいはラテンアメリカ全体の映画事情に対するアンチテーゼともなっている映画なのですが、そのことを語らずとも十分にいい映画なのです。
 1つ言っておくならば、最初の子供たちのアンケートで数少ない映画を見たことがある子供が答えた「ランボー」や「ロッキー」というタイトルが、ラテンアメリカにおけるハリウッド巨大映画資本の支配の象徴であるということです。

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