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黒の超特急

2001/3/23
1964年,日本,94分

 
            
     
 
 岡山で細々と不動産業を営む桔梗のところに東京の観光開発会社の社長と名乗る男が儲け話を持ってきた。その男・中江によれば、桔梗の住む町に大きな工場が誘致されるらしい。大金をつかみたい桔梗はその男の話に乗り、地主達を説得するのだが…
 増村としては三作目の「黒」シリーズだが、シリーズとしては11作目(なんと2年ちょっとで)にして最後の作品。金と正義とが複雑に絡み合う社会派サスペンスで、なんといっても田宮二郎の熱演が光る。
監督 増村保造
原作 梶山季之
脚本 増村保造
    白坂依志夫
撮影 小林節雄
音楽 山内正

出演 
田宮二郎
    藤由紀子
    船越英二
    加東大介

 

 

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 冒頭(タイトルの前)、激しいフレーミングで驚かされる。すごくローアングルだったり、腰の高さだけを切り取ったりという感じ。タイトルが出た後は少々落ち着くので安心。増村らしい構図は健在だが、それほど目に付かず、それよりも(黄金期の)ハリウッド映画を思わせるディープ・フォーカスのパースペクティヴが使われているのが印象的だった。それとローアングルが多い。この二つはおそらくサスペンスドラマとしての劇的効果を狙ってのことだと思う。
 しかし、映画としてはサスペンスというよりはメロドラマという感じで、硬派なドラマさよりは増村らしいウェットな雰囲気を感じる。それは増村ファンとしてはうれしい限りだが、サスペンスとしてはどうなのか? あるいは、完全に増村的ではない(例えば、主人公のキャラクターが他の作品と比べると徹底されていない)ところはどうなのか? などと、増村的なるものといわゆるサスペンスなるものの間で揺れ動いてしまった。

 この「黒」シリーズは基本的にメロドラマ的な要素が強く、サスペンスといいながら、ヒロインとのウェットな関係がいつも物語のスパイスというか、サブプロットというか、主人公のキャラクター作りの一つとして使われている。最終作になっても、増村は自分が作り上げたそのスタイルを守り、シリーズに一貫性を持たせている。そして、この2年間で11作というモーレツな勢いで作られてシリーズは、時代のモーレツさを象徴しているものかも知れなず、シリーズの最後はまさに時代を象徴するものとしての“新幹線”がテーマとなっているのだ。
 60年代は田宮二郎の時代と私は(勝手に)主張するが、その60年代の前半の時代的なものをすべて盛り込んだシリーズがこの「黒」シリーズであったのだと思う。そこには60年代という時代が描きやすい単純な時代の空気を持っていたということも大きく、今となっては時代を象徴するようなシリーズなんてものはどうあがいても作れないだろう。だから私がこの「黒」シリーズを賞賛するのは、自分が生まれていない時代へのノスタルジーでしかないということも言える。
 でも、時代なんてそんなものだとも思うし、ノスタルジーだって悪い面ばかりじゃないんだよといいたい。ハリウッド映画の未来への幻想と、日本映画のノスタルジーと、まったく違うもののようで、行き着くところは夢の世界に浸れる時間という同じものなのかもしれないと、ずいぶん大規模なことを考えてみたりもした。