1961年,日本,110分
監督:吉村公三郎
脚本:新藤兼人
撮影:小原譲治
音楽:池野成
出演:京マチ子、若尾文子、中村玉緒、叶順子、田宮二郎、船越英二

 新設の洋裁学校に入り込んだ胡散臭い実業家銀四郎は実務では手腕を発揮して、学校をどんどん拡大していく。胡散臭いと思いながらも銀四郎のペースに巻き込まれていってしまう院長と一番弟子たちを描いた、濃い目のドラマ。
 昨年11月にこの世を去った吉村監督の作品の中でも、比較的マイナーな作品だが、出演者陣は豪華。ドラマが濃密で、いやむしろ濃密過ぎて110分という時間がかなり長く感じられる、充実した作品。

 吉村公三郎は光の作家であるとこの映画を見て思った。冒頭のシーンからずっと後姿だった銀四郎が振り返っても、彼の顔に光は当たらず、逆行の中去ってゆく。
 しかし、最初のうちはそんな光加減よりも、セリフの多さに圧倒され、物語についていくのに必死である。しばらく経ってそれが落ち着くと見えてくるのは光。特に逆行を使って顔を影にする効果(どことなくヒッチコックを思わせる)はこの映画の最も特徴的機名部分といえるだろう。
 その他にも光を意識させる部分が多くでてくる。たとえば灯りの着いた部屋を暗い廊下側から眺める場面など、壁の部分が完全に黒く、明るい部屋との対比をなしている。この「壁」は増村もよく使う方法だが、増村の場合光を利用するというより、例えば画面の右半分を壁でふさいでしまうなどして構図に工夫をするために使う。吉村の場合は大概部屋は画面の真中にあり、光と影の対比が強調されている。
 もう一つ印象的な光の使い方は、暗い部屋や廊下に差し込む光が顔を照らすというもの。ある意味では陳腐な方法だが、スポットのように照らされた顔に浮かぶ表情はやはり非常に印象的である。他にも夜には窓の外に必ずネオンサインがあったり、「光」を使った演出が非常に多く、しかも巧みである。

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