1999年,日本,100分
監督:塩田明彦
原作:喜国雅彦
脚本:塩田明彦、西川洋一
撮影:小松原茂
音楽:本多信介
出演:水橋研二、つぐみ、草野康太、井上晴美、真梨邑ケイ

 同じ剣道部で同級生の北原紗月と日高拓也。互いの気持ちを告げることが出来ずに2年近くのときを過ごしてきたが、拓也の親友マルケンが紗月にラブ・レターを渡してくれるよう拓也に頼んだことをきっかけに、二人はようやく思いを通い合わせることが出来た。2人は普通に付き合い始めるのだが、拓也にはなんともいえない違和感と満たされない思いがあった。
 いわゆるノーマルではない性癖を持つ高校生の拓也が求める究極の愛とは何なのか? 濃密で美しい屈折した純情さを描いた青春映画の傑作。

 この世界観は素晴らしい。高校生を主人公に選び、マゾヒズムとフェテシズムをうまく描きこんでいるのがすばらしい。説明するのがバカらしいくらいストーリーに力があり、ぐんぐん引き込まれていく。最初の爽やかさが徐々に崩れていく中、しかし高校生であるという条件を生かして純粋さというか未熟さを残し、深みには入り込みすぎない。SMの世界へと入り込んでいく激しさを描くよりも深みのある世界観を描けていると思う。そのあたりはかなり原作のコミックによるところが大きいのでしょうが、それは気にせず純粋に映画として楽しみましょう。
 それから、この映画が映画として秀逸なのは、1カットでフィックスフレームでの構図の変化。固定されたフレームの中で、均整の取れた構図がアンバランスな構図へと変化するその変異が美しい。ひとつは風邪で寝ている卓也の顔の汗を紗月が拭くシーン。椅子に座っていた紗月が卓也の枕もとへかがみこむ瞬間、右へと偏るその変化。もうひとつあげればラストシーン、土手の上に座る紗月のところへ拓也が登っていくシーン、こっちはさらにこっていて、最初左に2人という偏ったフレームから、拓也が一度右に移動してバランスが取れ、また左に移動してアンバランスになるという変化。他にもあちこちにありました。
 かなりロケハンを重ねていそうな風景も素晴らしい。風景が風景として撮られているところはあまり無いけれど、ロングショットを多くしてかなり風景を意識的に見せている感じはしました。
 役者さんたちもちょっとセリフはおぼつかないところもありましたが、表情による表現が非常によくて、かなりの緊張感とリアリティーを感じましたね。
 かなり好きですこの作品。「どこまでもいこう」もよかったですが、こういうちょっとドロッとした作品のほうが噛みがいがあっていいですね。

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