1959年,日本,95分
監督:増村保造
原作:源氏鶏太
脚本:白坂依志夫
撮影:村井博
音楽:塚原哲夫
出演:若尾文子、川口浩、船越英二、丹阿弥谷津子、宮口清二

 結婚式の披露宴、新郎新婦は三原家の次男二郎と野々宮家の次女梨子。兄一郎と姉桃子も結婚しているため、みなは三男三郎と三女杏子も予想していた。そしてその通り事を運ぼうとたくらむ長女の桃子。桃子は三原商事社長の一郎をすっかり押さえ込み、自分の思うように事を運んでいた。
 増村らしいハイテンポの恋愛ドラマ。比較的初期(8作目)の作品だけあって、後期のどろどろとした感じよりも、爽やかなコメディタッチの作品に仕上がっている。

 若尾文子主演はこれが二作目で前作は「青空娘」。実はこの「最高主君夫人」と「青空娘」は原作者も同じ源氏鶏太ということで、かなり似た感じの作品になっている。しかし、この作品は川口浩、船越英二といった増村作品おなじみの顔ぶれがずらりと顔を並べ、増村的世界がより完成されている。しかし、ハイテンポは相変わらずで、セリフも早いし、セリフの継ぎ目はないし、プロポーズしてから結果を告げるまでもあっという間だし、振られてあきらめるのも早いというわけ。とにかく展開の早さにはついていくのが大変。一番おかしかったのは、杏子に野内がプロポーズしたと知って、桃子が「転勤させてしまいなさいよ」というところ。そりゃねーよ、いくらなんでも、話が手っ取り早すぎりゃぁ、と口調も江戸っ子になっちまうくらい。
 そんな感じですので、こちらも展開を早く。とにかく気になったことをずらずら羅列。
 杏子と三郎の二人が映っているシーンの構図が素敵。二度目に二人でバーで会った場面、三郎の背中・杏子の横顔・バーテンの立ち姿が微妙な配置で美しい。ロカビリーのところ、少しはなれてカウンターに座っている二人の位置取りが美しい。一郎の家で、一郎と桃子をはさんで、画面の両端に三郎と杏子がいるシーン、むしろ端にいる二人が中心なんじゃないかと思わせる素晴らしさ。
 なんといっても面白いのはわけのわからぬうちに進んでしまう展開だけれど、たとえば、杏子が岩崎と宇野をくっつけてしまうところなんかは、なんのこっちゃといううちに、すっかり話がまとまってビール6本飲まされて、結婚がまとまって、みんなめでたそうな顔をしている。いいのかそんなテキトーで?と思うけれど、そのテキトーさがむしろ正しくて、自然なものなのかもしれないと思えてくる。内面の葛藤がー、とか、三角関係のギクシャクとか、そんなことは笑い飛ばせよ、そんなことしてる暇はねーよといわれている気がして、なんとなくスカッとしました。別に内面の葛藤があるわけではないですけどね。

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