1976年,日本,111分
監督:増村保造
原作:素九鬼子
脚本:白坂依志夫、増村保造
撮影:中川芳久
音楽:竹村次郎
出演:原田美枝子、佐藤祐介、岡田英次、梶芽衣子、田中絹代

 山奥の山村で「ババ」と暮らす13歳の少女りん。いつものように猟から帰ってくるとババが冷たくなっていた。りんはババの死を隠そうとするが村人にばれ、しばらくしてやってきた人買いにだまされ瀬戸内海の島の女郎家に売られてしまう。そんなりんのこれまでの生をお遍路参りをするりんの姿を挟みながら展開させる。
 やはり焦点を当てられるのは女性。といっても少女。増村と少女、男を惑わす妖艶な女性とは違った女性像を増村が描く。

 なんといっても原田美枝子が素晴らしい。暴れまわるシーンにスカッとしたり、ヌードのシーンにドキッとしたり、いかにりんを魅力的に描くかというのがこの映画の最大の焦点なのだろう。自由奔放で純粋、勝気で芯が強い。しかし不安定で、わがままで弱い。そんなりんに感情移入せずに入られない。
 物語として完全にりんに焦点を絞っているのもいい。りんの周りの人々はりんと関わるところ意外はばっさりと切ってしまっている。りんがはじめて恋をする漁師の息子なんかはもう少し引っ張りたくなるのが心情というものだけれど、あっさりと映画から立ち去る。そういう意味では人買い(名前忘れた)が死ぬエピソードが挿入されたのはちょっと納得が行かなかった。それもバサリと関係ないものとして、切り捨ててほしかったというのが正直なところ。
 りんのキャラクターに比べて映画全体のトーンはそれほど荒々しいものではなく、映像的にも落ち着いている。最後の最後で幻想的なシーンが出てくる以外は、意外と普通に撮っている。なぜ?と考えると、画面の中でりんが動き回っているわりにはカメラはどっしり構えている、あるいはりんが動き回るからカメラは動かす必要がない。からでしょう。思い返してみれば、移動カメラを使ったシーンというのはひとつもなかった気がする(多分あると思うけど)。それくらいどっしりとカメラが構え、りんがフレームアウトするとカメラを切り替えるという場面構成になっていたような気がする。やはりこういう強弱が映画には重要。人も動けばカメラも動くじゃ、メリハリがなくっていけねえ。
 頭に残るのは音楽。映画全体を通して流れるテーマ曲が耳に残り、エンドロールで少しだけ歌詞つきのが流れるのにはつい笑ってしまった。ギターの音なのに妙に和風。不思議。

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