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盲獣

2000/11/12
1969年,日本,84分

 
            
     
 
 自分がモデルとなった彫刻を見るため画廊に足を運んだアキはそこでその彫刻をなでまわす一人の盲人に出くわした。それを見たアキは不気味な感じを覚えた。数日後、マッサージ師を呼んだアキは突然麻酔薬をかがされ、目や鼻や乳房の不気味なオブジェが並ぶ大きな部屋に閉じ込められ、そこにあの盲人が現れた。
 江戸川乱歩の原作に、圧倒的な迫力のセット。とにかく妖艶にして不気味な世界がそこにある。しかしそれはただ気持ち悪いのではなく、なんともいえない魅力を放つ世界でもあるのだ。

監督 増村保造
原作 江戸川乱歩
脚本 白坂依志夫
撮影 小林節雄
音楽 間野重雄

出演 緑魔子
    船越英二
    千石規子

 

 

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 不気味なセットと、船越英二の気味の悪さにどうしても目が行ってしまうが、この映画の本質は心理劇あるいは感情劇だ。アキへ異常な愛を寄せる盲人。今言えばストーカーというところかもしれないが、その範疇にはとどまらないほどの異常さ。そして、その異常な空間に置かれた二人の感情が徐々に変化してゆくこと。その過程がまた異常であり、結果もまた異常である。と正常である(と思っているあるいは錯覚している)我々は感じる。
 しかし、それが恐怖を生むのは、その異常さが非現実的な異常さではなくて、何らかの形で現実味を帯びている異常さだからだろう。「こんなことはありえない」と思うけれど、なんとなく「ありうるかもしれない」と思わされてしまう瞬間。その瞬間がこの映画の恐怖の源泉だ。
 もちろんその恐怖をあおるのは不気味なオブジェ群と船越英二の演技なのだけれど、本当に恐ろしいのは自分もまたアキであるかもしれないという可能性なのだ。それはわけのわからない人にさらわれるかも、という恐怖なのではなく、このような「異常な」世界に引き込まれてしまう(それは無理やりではなく、最終的にはこの映画のアキのようにある程度は自らの意思で入り込んでしまう)かもしれないという恐怖なのだ。