Los Olvidados
1950年,メキシコ,81分
監督:ルイス・ブニュエル
脚本:ルイス・ブニュエル、ルイス・アルコリサ
撮影:ガブリエル・フィゲロア
音楽:ロドルフォ・ハルフター
出演:ロベルト・コボ、エステラ・インダ、アルフォンソ・メヒア

 ルイス・ブニュエル初期の代表作。メキシコシティのスラムに生きる少年を中心とした人々の暮らしを描く。貧しいゆえの不幸、精神の歪みを感情を押し殺して描き出すさまは見事。
 夢の描写、動的なカメラワークとブニュエルらしい映像美も味わえる。娯楽色の強いものが多いメキシコ時代の作品の中では異彩を放つシリアスな作品に仕上がっている。
 カンヌ映画祭監督賞受賞。 

 映像とセリフ以外のものをまったく使わずに、これだけ人の心理を表現するブニュエルの力量はさすがとしか言いようがない。特に、校長に信用され意気揚揚と出かけたペドロがハイボにつかまり、いらだたしさをつのらせてゆく辺りは、こちらまでもがこぶしを握り締めてしまうような見事な描写力である。
 ここに出てくる人々はみなが皆悪人ではなく、しかし貧しさのゆえに心を歪ませ、そのせいで自らの状況から抜け出せないという悪循環に陥っている。この設定はまさにブニュエル的といえる。人々の善の部分を信じ、社会の悪を告発する。そのようなブニュエルの信念が、作品全体から滲み出す。そして、救われない結末……
 観る側の精神の奥底に入り込んでくるような力のある映画だった。

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