Hombre Mirando al Sudeste 
1986年,アルゼンチン,107分
監督:エリセオ・スビエラ
脚本:エリセオ・スビエラ
撮影:リカルド・デ・アンヘリス
音楽:ペドロ・アスナール
出演:ウーゴ・ソト、ロレンツォ・クィンテロス、イレーネ・ベルネンゴ、クリスティーナ・スカラムッサ

 田舎の精神病院に勤めるデニスのところに突然現れた青年ランテースは、自分は宇宙船で地球にやってきたと主張する。そのこと意外はすべて正常な彼はいったい何のために精神病院にやってきたのか?アルゼンチン版『カッコーの巣の上で』とも言える作品。

 ランテースは果たして「キリスト」なのか?
 ランテースをキリストとし、デニスは自分をピラトゥに例えるが、それならば救われるべきローマの民は精神病院の患者たちということになる。果たしてそのような図式でこの映画は成り立ちうるのか?精神病院という閉ざされた世界でのみ語られる物語は、全的な救済の一部として描かれているのか?
 好意的にとれば、この物語はランテースによる救済の物語と考えることもできるが、救済されるべき(無知な)人々として精神病患者たちを取り上げるというのはどうにも落ち着きが悪い。しかもその患者たちはあくまで没個性的であって、非人間的である。それに対して、医師のデニスは内面も深く描かれ、人間的である。非人間的な患者たちが徐々にランテースに感化され、人間デニスの苦悩はいっそう深くなってゆくという構図はあまりに安直で納得がいかなかった。
 映像は非常に美しいのだけれど、その美しさまでもがなんだか作り物のように見えてきてしまって辛かった。

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