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THIS IS ENGLAND

80年代前半、世界は思春期の悩みを抱えていた。
★★★★-

2010/4/6
This is England
2006年,イギリス,98分

監督
シェーン・メドウス
脚本
シェーン・メドウス
撮影
ダニー・コーエン
音楽
ルドヴィコ・エイナウディ
出演
トーマス・ターグーズ
スティーヴン・グレアム
ジョー・ギルガン
アンドリュー・シム
ヴィッキー・マクルア
ロザムンド・ハンソン
アンドリュー・エリス
preview
 1983年イギリス、ヒッピー風の服装をした少年ショーンは学校で毎日からかわれ、鬱屈としていた。しかし、ある日の帰り道、スキンヘッドの不良グループのリーダーであるウディーに慰められ、彼らと遊ぶようになる。スキンヘッドにしたときは母親に怒られるたが、基本的にはいい若者達だった。しかし、仲間の一人であるコンボが刑務所から出てくると事態が急変する…
 フォークランド紛争とスキンヘッズの台頭という時代を少年の目を通して描いた青春映画。うーん、いい出来。
review

 いじめられっこのショーンにやさしくする青年ウディーは筋も通っていて非常にいい青年だ。マリファナもやるスキンヘッドの不良少年ではあるけれど、考えていることに筋は通っている。ショーンが憧れるのはそんなウディーであり、彼の仲間になろうとブーツを母親にねだり、頭をスキンヘッドにする。

 このスキンヘッドにしたことについては母親に怒られるけれど、ウディーの仲間はそのことで母親に素直に謝り、母親もそれを聞き入れ、ショーンが彼らと遊ぶのを認める。この辺りはすごくいい。相手を外見で判断し、レッテル貼りするのではなく、直接対峙した上で判断するのだ。

 しかし、ウディーの仲間の一人で刑務所を出所してきたばかりのコンボは完全に国粋主義/極右/人種差別主義に染まっている。それでも彼の言葉には説得力があり、ショーンにも影響力を持つ。しかし、移民を排斥しようというコンボの考え方は人々にレッテル貼りをし、個人と対峙することなく相手を攻撃するというあり方だ。

 少年ショーンはそんなオトナたちの考え方の間で揺れ動く。そのショーンの揺れ方は、単に一人の少年の心のありようというよりは、イギリスという国と、さらには世界の行く先の揺れにもつながっている。1980年代前半という微妙な時代、さまざまなところで摩擦が生まれ、物事が変わろうとしていた。その変化を世界がどう受け止めるかわからなかったように、ショーンも一体どうしていけばいいのかわからない。そんなもやもやとした時代の雰囲気が非常によく描かれている。

 そして同時に、さまざまなものに対して不満や反発を覚えるという若者に不変の衝動も描かれているのもよい。ウディーがショーンの憂さ晴らしのために誘うのは廃屋をただただ破壊する遊びだ。自分の中に抱えたもやもやを発散するために何かを攻撃するその攻撃の矛先を何にするかが若者がどう成長するかということなのかもしれない。それを“移民”に向けてしまったスキンヘッズはすごく不幸だ。

 スキンヘッドの文化が誕生したのは60年代末のイギリスであるといわれる。スキンヘッドのポリシーはカウンターカルチャー、社会に反抗しようという姿勢である。それが80年代に復活し、移民排除を求める国粋主義に結びついた。そしてそれがさらにネオナチへと結びつく。その進み行きは社会が不寛容へと傾く流れと呼応しているように思える。

 そんな風に考えていくと、1980年代前半という時代に注目したくなる。いまの時代がこのような時代になった重要な分かれ道が1980年代の前半にあったのではないか、そんな気がするからだ。

 まあ、そんな話はともかく、この映画は青春映画として社会派映画として秀逸な作品だ。思春期の少年が大人の世界に憧れ、そこに手が届きそうになるとき、その何を受け入れ、何に違和感を覚えるのか、その選択をしなければならないということが成長であり、この映画には少年ショーンが一歩ずつ成長していく姿がしっかりと描かれている。大人が見て、苦い思春期の記憶を蘇らせ、その意味を考えたくなるようなそんな作品だ。

Database参照
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国別・年順: イギリス

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