レスラー
2010/3/9
The Wrestler
2008年,アメリカ,109分
- 監督
- ダーレン・アロノフスキー
- 脚本
- ロバート・シーゲル
- 撮影
- マリス・アルベルチ
- 音楽
- クリント・マンセル
- 出演
- ミッキー・ローク
- マリサ・トメイ
- エヴァン・レイチェル・ウッド
- マーク・マーゴリス
- トッド・バリー
80年代に大活躍したプロレスラーのランディ“ラム”ロビンソンは20年以上がたった今もスーパーで働きながら週末は小さな会場でプロレスの試合に出続けていた。しかし、ある試合の直後、彼は心臓発作で倒れバイパス手術を受ける、引退の危機に立たされた彼はなじみのストリッパーのキャシディを訪ねるが…
ミッキー・ロークがぼろぼろになったレスラーを好演した人間ドラマ。監督は『π』のダーレン・アロノフスキー。
主人公のラムは20年前の栄光にもちろんすがりながら、しかしそれに溺れることはなく生きている。平日はスーパーで働き、週末はリングに立つ。リングでは過去の栄光もあり人気もあってメイン・イベントを張り、他のレスラーからは尊敬される。今の境遇に不平を言うことも、腐ることもなく、対戦相手にも敬意を持ち、才能がある相手は褒めることを忘れない。
決して人生の勝利者ではない。しかしすごく共感できるし、同情したくなる人間だ。ステロイドを使っても体はもはや全盛期のような張りはない、しかし彼はリングに立ち、必殺技を決め続ける。彼がこのような人物になり得るにはさまざまな経験があったのだろう。
そしてそんな彼がおそらくステロイドのせいで心臓発作を起こし、バイパス手術を受ける。もうプロレスはできないと言われ、馴染みのストリッパーのキャシディに会いに行く。キャシディに特別な思いを抱きつつ、娘のことを思い出し会いに行く。
この辺りのプロットが実に見事だ。わかりやすいというかパターン化されているというか、ありきたりというか、そういってしまうことは簡単なのだが、そのパターンの中でもこの老齢のレスラーの心情を推し量るとなんとも切ない。全盛期に人気を得るために家族から離れてしまい、その人気を失い、それでもプロレスにすがり続け、今度はそのプロレスを失ってしまった。
娘との和解、キャシディへの想い、それしかなくなってしまったラムの哀しみ…
ラムもキャシディも年齢によって自分のプロフェッショナルな職業を失う危機にある。しかし彼らはそのことで自分を卑下することはない。受け容れねばならない現実は受け容れる。しかし、プライドは失わない。その彼らの“生き様”に痺れる。強さと弱さが常に同居する人間の心、特に「弱さ」に惹かれる。しかしただ弱い人間な訳ではなく、強さももちながら、どうしても弱い部分が出てしまう。それが人間、性別にも年齢にも職業にも関係なく人間。
ダーレン・アロノフスキーは堂の風変わりな映画を撮っている印象が強いけれど、実はどの作品もしっかりと人間を描いてきた。それがこの作品にも表れているのだろう。ミッキー・ロークとの出会いもそれをさらに素晴らしいものにした。ヴェネチア映画祭金獅子賞も納得。
