美しき結婚
2010/2/2
Le Beau Mariage
1981年,フランス,100分
- 監督
- エリック・ロメール
- 脚本
- エリック・ロメール
- 撮影
- ベルナール・リュティック
- 音楽
- ロナン・ジール
- シモン・デジノサン
- 出演
- ベアトリス・ロマン
- アンドレ・デュソリエ
- アリエル・ドンバール
- フェオドール・アトキン
- ユゲット・ファジェ
美術史を学ぶ大学院生で骨董屋で働くサビーヌは不倫相手との関係がいやになり、「結婚する」と宣言する。その話を聞いた友人のクラリスはサビーヌを弟の結婚パーティに招待し、いとこのエドモンを紹介する。サビーヌはひと目でエドモンのことを気に入るが…
シリーズ“喜劇と格言劇”の第2作、結婚をめぐる男女の思惑や考えの違いが呼ぶ悲喜こもごもがリアル。
「結婚をしよう」と決意するサビーヌ、しかし相手はまだ見つかっていない。彼女にとって「結婚」とは何を意味するのか?
この作品に物語らしい物語はない。結婚したいと考える一人の若い女がかといって結婚に必死になるわけでもなく、新しい出会いと恋に心ときめかせたり、イライラしたりするというだけの話だ。
とにかくこの主人公のサビーヌの性格が極端だ。せっかちで直情的でヒステリック、感情の豊かさは魅力的ではあるけれど、一緒にいたら疲れそうな感じ。エゴイスティックと言うわけではないんだけれど、自分の欲求をしっかりと持っていて、それが叶わないときにはそれが直に怒りや鬱憤につながって、外へ向けて噴出する。
このサビーヌが振り回されるというか、心が揺れていろいろなことをしでかすと言うのがこの作品の“喜劇”の部分であるのだろう。まあ笑えはしないが、彼女の姿はどこか滑稽ではある。
そして、このサビーヌの感情の変化を見て、その裏にある心の動きを推察し、彼女の行動の持つ意味を考察した上で出てくる結論がこの作品がわれわれに投げかけるメッセージだ。それは別に“格言”というわけではないけれど、「人のふり見て我がふり直せ」というか、短期であると言うよりは直情的であるがゆえに周囲が見えなくなってしまうことの醜さというか、そういうようなものが見えてくる。
だからと言って別にこのサビーヌがひどい人間というわけではない。彼女は自分の感情を抑えることができない、そのような生き方は社会的に見れば、迷惑な生き方だ。しかしそういった感情の発露の強さというのは時に人を惹きつけ、時には芸術といった形で爆発する。
この物語の中でサビーヌはいろいろな人から「物を作る」ことを勧められる。彼女はそれを「才能がない」と言って退けるが、実は彼女のこの直情的な性質こそ芸術の才能なのではないか。周りの人たちはそれを感じ取り彼女に勧める。
彼女はいい人にもいやな奴にもなれる。彼女と接する人がそれをどう受け取るか、それは人それぞれだ。昔の恋人と偶然再会し会話をかわすシーンが挿入されているのも、そのような状況で彼女がどんな言動をし、それが相手にどのような影響を与えるのかを示すためだろう。
こういう形で「感情」の持つ力を描くというのはすごく面白いと私は思うし、エリック・ロメールだからこそ物語的にはそれほどダイナミズムを感じられない映画でもそれが出来たのだと思う。ロメールの作品の中で特筆すべき作品と言うわけではないが、高い水準にある作品なことは間違いない。
やはり私はロメールのこのリアルさが好きだ。
