マン・オン・ワイヤー
2010/1/17
Man on Wire
2008年,イギリス,95分
- 監督
- ジェームズ・マーシュ
- 原作
- フィリップ・プティ
- 撮影
- イゴール・マルティノヴィッチ
- 音楽
- マイケル・ナイマン
- 出演
- フィリップ・プティ
1974年、ニューヨークで当時世界一の高さとなったワールド・トレード・センターのツインタワーの間で綱渡りをした男がいた。その男フィリップ・プティはそれまでにもノートルダム寺院などで綱渡りを敢行してきた。この世紀の挑戦の計画の始まりはは彼がまだ十代の頃にさかのぼる…
伝説的な綱渡りの事実を記録映像と再現ドラマ、インタビューによって完全再現したドキュメンタリー。
屋上の高さは地上417m、その高さに綱を張り、綱渡りをする。そんな無謀な計画を建てたフィリップ・プティ。難しいのは綱渡りそのものよりも、ばれないように屋上に上り、ワイヤーを設置すること。そのため、まだ屋上が工事中のうちに計画を建てる。計画には恋人や幼馴染、オーストラリアで出会った仲間、そして今回アメリカで出会った仲間が加わる。
ノートルダム寺院やシドニーの橋の上で綱渡りする映像は本当にすごい。細い綱が見えないために本当に宙に浮いているように見えるのだ。そしてその上を歩くだけでなく、寝そべったり、ジャグリングをしたりもする。すごいと言うよりは美しい、彼が言うようにこれはある種の芸術なのだと感じる。これが地上400mの高さで行われるかと思うと、いやが上にも期待感が高まるわけだ。
そしてその実現のためにどのように工事中のビルに忍び込んで屋上にワイヤーを張るのか?というのがこの映画の見所な訳であり、もちろんそれが主プロットとなる。しかし素直に時間を追って準備の様子を物語として描いていくのではなく、関係者のインタビューにそってさまざまな場面を再現していく形で映画は進行してゆく。時に話は時間を大きくさかのぼり、場所を飛び越え、脱線しもする。
それはどこか散漫な印象を与えるけれど、それでも綱渡りへいたるまでの道程から興味がなくなることはない。それほどまでにこの映像は鮮烈だ。
そしてその脱線は最後にこの物語がそのワールド・トレード・センターの綱渡りに関して物語ではなく、フィリップの人生そのものについての物語であることが明らかになることですべてがパズルのピースのように収まるところに収まるのだ。
フィリップにとって人生最大の挑戦であるこの綱渡り、その挑戦がすごいがためにフィリップ自身にも周囲にも非常に大きな意味を持つ。しかも彼の挑戦は常に命の危険と隣合わせでもある。本当に命が細いタイトロープによってしかつながっていない瞬間、彼が地上400mの高さで過ごすのはそんな瞬間なのである。
私たちは彼の綱渡りをただただ美しいと感心して見るだけだが、それを近くで経験することはまた別の意味を持つ。偉業を成し遂げたという達成感よりも、その偉業が人生に落とす光と影になんともいえない余韻を感じる。
