やがて復讐という名の雨
2010/1/4
MR73
2007年,フランス,125分
- 監督
- オリヴィエ・マルシャル
- 脚本
- オリヴィエ・マルシャル
- 撮影
- ドゥニ・ルーダン
- 音楽
- ブリューノ・クーレ
- 出演
- ダニエル・オートゥイユ
- オリヴィア・ボナミー
- カトリーヌ・マルシャル
- フランシス・ルノー
- フィリップ・ナオン
刑事のルイは交通事故で妻が寝たきりになってしまい、酒に溺れた日々を送り、バスジャック事件まで起こしてしまう。逮捕は免れたが現場からははずされてしまう。一方、そのルイが依然に捕まえた連続殺人犯が仮釈放になりそうと聞き、被害者の娘ジュスティーヌは恐怖を抱き、ルイに相談をしようと考える…
『あるいは裏切りという名の犬』の監督と主演が再びコンビを組んだサスペンスドラマ。大分残念な仕上がりで劇場未公開。
妻子の交通事故以来酒に溺れどうにもならなくなってしまった刑事ルイ、現場からはずされてしまうが元相棒と新たに組んだ奴がどうしようもない奴で、その元相棒からはいまも頼りにされる。
一方、そのルイが昔捕まえた連続殺人犯が模範囚として仮釈放されようとしている。しかしそれはあくまで偽装であり、そのことに感ずいている当時の被害者の娘ジュスティーヌは危機感を募らせる。
とまあ、プロットを書いてみるとそこそこ面白そうな話なのだが、この二つの筋のつながりもギクシャクしているし、それぞれの設定や細部にかなり無理があり、なかなか入り込めない。ルイの罪悪感のあり方もよくわからないし、警察組織はあまりに腐敗しすぎていて理解しがたいし、殺人犯の仮釈放の審査も甘すぎる。まあ、そのどれもが警察組織の腐敗につながってはいるわけだけれどこの物語自体はその腐敗を描くのではなく、あくまでもルイという個人を描いたもので、そのあたりの焦点のずれも気になるところ。
そして、ルイが主人公だから何らかの形でルイがヒーローとなるような結末をつけようとしている。この結末のつけ方自体は理解できなくもないが、ちょっとやりすぎ。この過激な結末にカタルシスを感じられるほど物語に入り込めてはいない。
というわけで、全体的になんとも物足りないというか今ひとつ納得できない展開の作品なわけだが、その最大の原因はやはり脚本だと思う。『あるいは裏切りという名の犬』では共同脚本だったが、この作品は監督のオリヴィエ・マルシャルが脚本にも単独でクレジットされている。監督が脚本も書くというのは当たり前のようでもあるが、実はそれがベストだとは私は思わない。
映画というのはどんなに監督が偉くてもたくさんの人がかかわらないとできないものだ。さまざまな人が関わり、その人たちの価値観があわさって映画が形作られていく。その映画の根幹はやはり脚本と演出にある。この部分を一人の人間が100%負ってしまうと、その作品はその個人の視点が非常に強く反映される。それが、常に自己を省み、自己を客観的に見つめるという経験が豊富ならいいのだが、そうではない場合、独りよがりだったり、他の人にはよく理解できないような物語が生み出されてしまうことがままある。
私はオリヴィエ・マルシャルに脚本の才能がないとは思わない。しかし経験が不足しており、自分が書いた脚本をともに演出したこの作品では、そのことから生じる“アラ”を自分自身では修正し切れていない。どこかで客観的な他者の視点が入っていれば、もう少し面白い作品になったのではなかろうか。
