マチュカ ~僕らと革命~
2009/12/29
Machuca
2004年,チリ=スペイン=イギリス=フランス,121分
- 監督
- アンドレス・ウッド
- 脚本
- エリセオ・アルトゥナガ
- ロベルト・ブロツキー
- マムーン・ハッサン
- アンドレス・ウッド
- 撮影
- ミゲル・ロアン・リティン・メンス
- 音楽
- ミゲル・ミランダ
- ホセ・ミゲル・トバー
- 出演
- マティアス・ケール
- アリエル・マテルーナ
- マヌエラ・マルテリィ
- アリーン・クッペンハイム
1973年、チリ・サンチアゴ。裕福な家庭のゴンサロが通うセント・パトリック・スクールに貧困層の子供が数人入学してくる。そのうちの一人ペドロと友達になったゴンサロは彼を通して初めてチリの現実を目の当たりにし、初恋も経験する…
革命とクーデータに燃えた73年のサンチアゴを少年の目から描いた社会派ドラマ。
チリでは1970年にアジェンデが政権を取り、共産主義よりの政策をとった。貧困層はこれを歓迎したが、富裕層は“コミュニスト”としてこれに反対し、混乱がつづいた。この混乱はチリ国内に権益を持ち、同時に共産主義の拡大に強く反対するアメリカも絡んで複雑なものなのだが、この映画ではとりあえず貧困層と富裕層の対立が激しかったということを知っていればいいし、知らなくてもゴンサロがそれを学ぶのと一緒になんとなく知ることができるようになっている。
裕福な家庭で育ったゴンサロは本当に何不自由なく暮し、スラムの存在する知らなかったようだ。彼が通う学校の進歩的な校長マッケンロー神父は社会の新たな流れを汲んで生徒達にも進歩的な教育を授けるべく地元の貧困層の子どもたちを授業料無料で編入させる。もちろん軋轢があり、典型的ないじめっ子も登場するのだが、主人公のゴンサロはその中の一人ペドロと仲良くなっていく。
知らない世界を知り、初恋も経験するといういわゆる少年の成長もの、階層の壁を越えて友情を育むふたりの少年の姿が微笑ましいが、そこには常に嫉妬と周囲との軋轢がある。
この少年の物語の展開は彼ら自身によってではなく、その周囲との軋轢によって劇的に変化し、アジェンデ政権がクーデターによって倒れることで結末がつけられる。そのクーデター後の展開は衝撃的だ。
人は政治に翻弄され、植えつけられたイデオロギーを自分の考えであるかのように思い込まされる。そしてそのことに気づく人は少ない。子供たちはまだイデオロギーに染まっておらず、階層を越えて人と人として付き合うことができる。ゴンサロやペドロたちの年齢(おそらく13歳くらいか)は微妙な年齢、その年齢で社会が掲げるイデオロギーが大きく変わるという経験をするというのはいかなるものか。
この映画で描かれているのは政治の大変動という劇的な出来事だが、同時にその過程で経験する日常の小さな出来事によっても子供の考えや行動が影響されるということも描かれている。親や先生といった身近な大人の行動や言葉に秘められたイデオロギーが子供の考え方を形成して行ってしまう。この映画の重苦しい終わり方を見て、自分の言葉や行動に責任を持つことの重要さに改めて気づく。70年代にチリで起きたことを知る人は少ないけれど、歴史から学べることは学ぶべきだ。軽率な発言は常に無知から生じる。自分の無知を知り、学ぶ努力を怠らなければいくらかはマシになるのかもしれない。
少年は経験によって成長した。しかし失ったものも大きい。そのことから学べることは多い。
