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ベストセラー

彼女の名はサビーヌ

自閉症の妹を見つめる視線を通して「他者」との付き合い方を考える。
★★★.5-

2009/12/22
Elle s'Appelle Sabine
2007年,フランス,85分

監督
サンドリーヌ・ボネール
脚本
サンドリーヌ・ボネール
カトリーヌ・カブロル
撮影
サンドリーヌ・ボネール
カトリーヌ・カブロル
出演
サビーヌ・ボネール
サンドリーヌ・ボネール
preview
 サビーヌは子供のころから自閉症だったが、成人になり病院に入ったころからその症状が悪化、現在は自閉症患者専門の施設で暮している。
 そのサビーヌの姉で女優のサンドリーヌ・ボネールが妹の日常を記録し、彼女がまだ若かった頃のホームビデオを織り交ぜて自閉症の妹の半生を描き出す。
review

 中年に差し掛かったサビーヌは自閉症者専用の施設で暮らす。その行動は気まぐれで、しかも時には暴力を振るったり、物を投げたりという行動を取る。妹で女優のサンドリーヌはそんな妹にカメラを向ける。それだけでは単に、障害を持つ家族を記録したビデオに過ぎないわけだが、この作品にはそれに加えてサビーヌが若かった頃のホームビデオの映像も織り交ぜられる。その頃の彼女はまだ症状が軽く、家族と過ごしている限りはごく普通に過ごせていたらしい。映像の上でもかわいらしい若い女性がニコニコと笑っている。

 この映像の対比によってこの作品は力を持つ。若かった頃の彼女と今の彼女、その変化の持つ意味とは。サンドリーヌはその原因を妹が他の兄弟と離れて暮すようになったこと、5年間の精神科への入院に求める。とはいっても病院を責めるわけではない。その原因や進行の仕方がよくわかっていない自閉症の症状の変化を冷静に見詰めようとしているだけだ。

 この作品を見ていえる感想は当たり前のことばかりかもしれない。自閉症の人たちと付き合うのは大変だ。しかし、彼らには感情や愛情がしっかりとあり、ちゃんと接してあげればちゃんと答えてくれる。

 そして、そのことから思うのは、彼らが私たちにとって最も身近にいる「他者」であるということだ。同じ事を見て、同じようにそれを処理しているはずなのに、それが体を通って表面に表れるときには違う形態をとる。サビーヌのいる施設のセラピストが語っていた「彼らはほかに不満などの感情の表現の仕方を知らない」という言葉が印象的だ。

 「他者」とは相互理解が成立しない相手のこと、表現方法が異なる自閉症者は私たちにとっては通常は「他者」だ。しかし、この作品を見るとその「他者」である人たちとの相互理解こそが重要だと思える。ただ、その過程は難しいもので私たちはその役割をここに登場するセラピストのような人たちに任せてしまっている、たとえ家族であってもだ。

 みんながそのような相互理解への道を歩む必要はもちろんない。しかし、理解できない、怖い、といった感情によって彼らを拒否することは避けなければいけない。人は理解できないものを拒否しがち、そのことを肝に銘じるだけのためでもこの映画を見る価値はある。

 基本的に妹を撮っただけのこの映像に、そのような示唆が含まれるのはこの作品の編集が秀逸だからだ。現在と過去の対比の中に現れる隔たりと共通項。前半では隔たりばかりが目立つが、後半では表情や眼差しに現在と過去の共通点が見えてくる。それは病気の兆候が昔からあったことと、今でもサビーヌはサビーヌであるということの両方を意味する。

 見ると結構気持ちが沈むけれど、その現実に目を向けなければならない。

Database参照
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監督順: 
国別・年順: フランス

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