パチャママの贈りもの
2009/12/14
El Regalo de la Pachamama
2009年,日本=アメリカ=ボリビア,102分
- 監督
- 松下俊文
- 脚本
- 松下俊文
- 撮影
- グスタホ・ソト
- ギジェルモ・ルイス
- カルロス・クレスポ
- セサル・ペレス・ウルタド
- 音楽
- ルスミラ・カルピオ
- 出演
- クリスチャン・ワイグア
- ルイス・ママーニ
- ファニー・モスケス
- ヒラリア・カブレラ
- フランシスコ・ラソ
ボリビアのウユニ塩湖近くに暮らすコンドリの一家は代々、塩湖から塩を切り出し、キャラバンで山間の村々に届けるという仕事を続けてきた。13歳になったコンドリは祖父に代わって初めて父とともにキャラバンに出ることに。そして少年はさまざまの初めての体験をすることになる…
ニューヨークで映画を学んだ松下俊文が6年の歳月を完成させた初の長編作品。ボリビアの風景と人々の笑顔がさわやかな小品。

(C) Dolphin Productions
この作品に描かれているのは、古きよき共同体精神、助け合いの心、そして思いやりである。偶然出会った見知らぬ人同士でも無償で助け合うという心、助けられた人はまた別の人を助け、それが連鎖してゆくことにより自然に助け合うという関係が生まれる世界、それが文明からかけ離れた素朴な風景の中にある。それだけでこの作品の持つメッセージは明らかだ。
そしてそれにも増して私たちに訴えかけてくるのがその風景だ。果てしなく白く広がる広大な塩湖や色とりどりの山間の里、加えてチチャ酒、リャマ、キヌア、コカといった独特の文化、それらにエキゾチックな魅力を感じずに入られない。
そして、ここに登場する人々が大切にする共同体社会は古きよき日本の地域共同体を思い起こさせ、ノスタルジーにも似た心地よさを醸し出しもする。表面上は異なっていながらも根底の部分では共通する部分を持つという人間として共感しやすい環境を作ってボリビアとボリビアの先住民のことを日本人に伝える。そのような作品としてはこの作品はいい。
まあしかし、日本人がボリビアを描いているわけだから、その表現が日本人にとってわかりやすいボリビアになるのは当然のことで、それだけでは映画としてやはり弱い。
そこで、超現実的世界というもうひとつの要素が絡んでくるわけだ。たとえば行動内に突然現れる悪魔の像、夢という形で実を結ぶ神々の世界、人間に姿を変える鳥、それらがあらわすのはラテンアメリカ世界特有の現実と非現実(と西欧で呼ばれるもの)、この世界と死者の世界との連続性を表しているのだろう。その連続性はマジックレアリズムという形でラテンアメリカ特有の芸術/文化となっており、この映画もそのマジックレアリズムを引用している節があるのだが、その部分がうまく描かれているとはなかなか言いがたい。
ボリビア映画といえばまず思い出されるのはウカマウである。この映画と同じく、先住民を出演者としてセミ・ドキュメンタリーを制作した。しかも、ウカマウ集団はラテンアメリカ的マジックレアリズムを大胆に利用し、現実と非現実の境を取り払い、どこか幻想的でありながらリアルでもある世界を描いた。それと比べるのはかわいそうといえばかわいそうなのだが、それを見てしまうとこの作品が力強さに欠けると感じてしまうのだ。
この作品も日本人にわかりやすいボリビア理解から一歩進んだ文化の深みのようなものを伝えてくれれば素晴らしい作品になったのではないか。わかりやすいのもいいが、複雑でわかりにくいところにこそ真実は隠されているのだから。

(C) Dolphin Productions
