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石内尋常高等小学校 花は散れども

人を育てる人との絆、変わり行く世の中で変わり行くものを見詰める。
★★★--

2009/11/16
2008年,日本,118分

監督
新藤兼人
原作
新藤兼人
脚本
新藤兼人
撮影
林雅彦
音楽
林光
出演
柄本明
豊川悦司
大竹しのぶ
六平直政
川上麻衣子
preview
 大正末期、広島県の石内尋常小学校の教師市川義夫は生徒に慕われる熱血教師だった。級長の良人は貧しい家に育ち、卒業後ひっそりと村を出る。30年後、市川先生の定年に際して同窓会が行われ、かつての旧友が一堂に会する。東京で脚本家となっていた良人も出席するが…
 新藤兼人が自身の体験をもとに恩師と教え子の心の交流を描いたヒューマンドラマ。
review

 尋常高等小学校は旧学制で現在の中学校にあたる学校だが、義務教育ではない。当時は尋常小学校のあと、高等小学校、中等学校、高等女学校などさまざまな進学先があった。高等小学校はその中でも一番進学者が多く、それ以外は「お金持ち」の通う学校だという意識があったという。だから高等小学校を終えればもう彼らは社会に出る。そこから先に進むのは金持ちかよっぽど優秀な子供だけなのだ。

 そのことはあまり関係ないのだが、尋常小学校というのはあまりに遠い言葉なのでちょっと解説してみた。高等小学校は2年または3年なので14歳か15歳でみな社会に出るわけだ。そんな意識で見るとそのときの彼らの思いというのが少し理解できる気がする。そして、そのときに支えてくれた恩師の大切さというのも想像しやすい。

 実際に新藤兼人には一生に渡って付き合うことになった恩師がいて、その先生への感謝も込めてこの作品は作られたのだという。

 良人にとってのこの市川先生の存在というのは自分を律する基準のようなものだ。今の自分は先生の前に自身をもって立てる自分なのか、そのことが自分自身を律する基準となっている。自他共に認める“ヘタレ”の彼にとってその存在は非常に大きいわけだ。

 その縦糸を基準にすると、この作品で展開されているさまざまな出来事の意味も見えてくる。一つ一つの出来事にあまり意味は無いように見えるし、恋愛の話が先生の話とどう関係あるのかなどと思うわけだが、そこにかかわる決断の一つ一つは先生との関係性のなかでなされているということなのだろう。主人公の良人だけでなく同級生の皆が。

 そう、だから噛み締めるほどに味がある。晩年、先生の言葉が不自由になっても生徒達は彼のもとに通う。体が不自由になることで関係は変わるけれど、芯にある信頼関係は変わらない。感動とか、勉強になるとかそういうことがあるわけではないのだけれど、体に沁みるという感じ。

 昔はよかった、とは言わないけれど、人と人との関係性が昔のほうが濃かったとは思う。そういう時代の人間関係から何を見るのか、変わり行く時代の中で変わり行くものを見詰めるというのはいつも勉強になる。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: 日本90年代以降

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