マイケル・ジャクソン THIS IS IT
2009/11/15
This is It
2009年,アメリカ,111分
- 監督
- ケニー・オルテガ
- 撮影
- サンドリーヌ・オラバナ
- ティム・パターソン
- 音楽
- マイケル・ベアデン
- 出演
- マイケル・ジャクソン
- マキア・コックス
- オリアンティ
2009年6月25日、マイケル・ジャクソンの突然の死、世界を驚かせたそのニュースは13年ぶりに行われるはずだったロンドン公演が幻となったことも意味した。しかしそのロンドン公演の長時間にわたるリハーサルの模様をクリエイティブ・パートナーのケニー・オルテガが映像化した。
彼の死を悼む多くのマイケルファンに向けた別れの挨拶ともいうべき2時間のライブ映像。ファンでなくとも必見。
マイケル・ジャクソンはキング・オブ・ポップ、スーパースターであることは間違いない。しかし、その捕らえ方は世代によって異なるのではないか。
マイケルに最も熱狂したのはおそらく今40代の1960年代に生まれた世代だろう。彼らにとってこの映画は感慨深くあり、マイケルの死という事実がリアルに突きつけられるつらい映画でもあるのではないか。1970年代に生まれた30代にとって音楽に興味を覚えたころマイケルはすでにスターであり、彼の曲はヒット曲として日常的に耳にするものだったはずだ。そんな世代にとってこの映画は「あの懐かしい曲」が次々と流れ「あのマイケル」が踊っているのを見られるという懐かしい作品になる。マイケルがすでに“伝説”の域にはいり、リアルタイムで得る情報といえば彼のおかしな行動ばかりという1980年代生まれの20代にとってはマイケル・ジャクソンを新たに発見する場となるのではないか。彼の音楽の素晴らしさ、彼の人間性などを改めて知ることになる。
とまずは描いてみたが、この映画はとにかくマイケルが歌って踊るシーンが満載。ダンサーやバンドのインタビューも入るが、それはあくまでコメントに過ぎず、すべてはマイケル・ジャクソンのステージに尽きる。さすがに全盛期の切れはないが、歌は本当にうまいし、踊りも50才とは思えないスムーズさだ。さすがはキング・オブ・ポップとうならずにはいられない。
2時間近くなんだけれど、もっと長くてもいい。もっともっといろいろな曲を聴いていたい。そんなことを思った。気合を入れてみるよりも、何気なく見ることを何度も繰り返す、そんな見方がふさわしい映画なのかもしれない。鑑賞するのではなく娯楽として楽しむのがポップミュージックの本来ならば、キング・オブ・ポップたるマイケルの最後の姿を記したこの映像も楽しく気楽に見られるべきなのだ。
この作品で時折のぞくマイケルの素の言動を見て思うのは彼は結局死ぬまで大人になれなかったのだということだ。誰もが言うことだけれど、彼は子供のまま年をとった。それが自信なさげで移り気な彼の態度から見える。
そんなマイケルの一生は幸せなものだったのかと考える。十分すぎるほどのお金は手にし、やりたいことはやっているが、どうしても周囲を信用することはできなかったのかもしれない。自分の周りに集まる人たちが信用できないとうのは悲しいことだ。
しかし、ライブに向けて歌って躍る彼の顔には笑顔が浮かぶ。歌って躍っているときだけは本当に心から幸せを感じられる、マイケルはそんな人だったんじゃないだろうか。公演は実現しなかったけれど、それに向けて大好きな歌と踊りを最後に思う存分楽しむことができたマイケルの一生は決して不幸なものではなかっただろう。
マイケルの曲が聞きたくなることは間違いない。そしてそれを聞くことこそが彼への最大のはなむけになるのだろう。
