ホルテンさんのはじめての冒険
2009/11/5
O'Horten
2007年,ノルウェー,90分
- 監督
- ベント・ハーメル
- 脚本
- ベント・ハーメル
- 撮影
- ジョン・クリスティアン・ローゼンルンド
- 音楽
- コーダ
- 出演
- ボード・オーヴェ
- ギタ・ナービュ
- ビョルン・フローバルグ
- エスペン・ションバルグ
定年を間近に控えた生真面目な運転士のホルテンさん、いつも規則正しい生活を送っていたが、退職前夜に送別会が行われて断りきれずついて行き、ひょんなことからそのリズムが狂ってしまう。果たしてホルテンさんは無事に定年を迎えることができるのか…
『キッチン・ストーリー』のベント・ハーメル監督によるほのぼのとしたヒューマンドラマ。
きっちりと毎日ルーティンを繰り返してきたホルテンさんが、定年間近に不測の事態に襲われる。そこから彼を襲うカオス(というほどでもないが)が彼を変えていく。退職しても運転士の制服のまま過ごすホルテンさん、しかし偶然が彼にいろいろな小さな事件をもたらす。
少年との出会い、初めての遅刻、行き倒れた老人との出会い、それらを通じてホルテンさんのただ生真面目なだけではない一面が出て来るという感じの話。運転士を辞めてもほるてんさんは制服を着続けるのだけれど、彼の真面目さの象徴たる制服も徐々にゆるんでくるという感じで、最後には私服で運転席に便乗して、運転士時代にいつも泊まっていたホテルを訪ねる。
本当になんてことはないんだけれど、90分という時間は心地よい。最初の本当に真っ白な雪景色から、最後のホルテンさんのすっきりした笑顔まで幸福でも不幸でもないけれど、なんだかほっとするそんな感じがずっと続く。一つ一つの事件にはちょっとした不条理さがあり、そこがこの監督の味というべきところだろう。だがその味はそれほどきつくはなく、オーソドックスな料理にちょっと意外なスパイスを加えたという感覚だろうか。
だから「まあ見てよ」という感じの映画という以上に表現の仕様がないのだが、この映画から見えてくるのは、人間いくつになっても初めてのことに出会うのは素敵なことだってこと。運転士時代にはルーティン通りの行動しかせず、会うのは同じ同僚と母親と後は馴染みのホテルの女将くらいだったホルテンさんが、新たに自由な時間を手に入れて様々なことや人に出会うことの素敵さ。
運転士時代も彼の生活は不幸ではなかったけれど、どこかで冒険を恐れているところがあったのかもしれない。それが定年によっていやおうなく小さな冒険に借り出され、しかしそれが素敵な経験につながる。
教訓というほどじゃないけれど、新しいことには新しい楽しみがあるんだよってことをふんわりと教えてくれる作品だ。
