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女経

大映映画黄金期の秀逸なオムニバス。女と金をめぐる3つの物語。
★★★★-

2009/9/28
1960年,日本,100分

監督
増村保造
市川崑
吉村公三郎
原作
村松梢風
脚本
八住利雄
撮影
村井博
小林節夫
宮川一夫
音楽
芥川也寸志
出演
若尾文子
山本富士子
京マチ子
川口浩
船越英二
叶順子
田宮二郎
中村鴈治郎
川崎敬三
preview
 ダルマ船暮らしの貧しい女が口八丁手八丁で夜の世界で成功する第一話、人生に迷った小説家がなぞめいた未亡人に出会う第二話、やり手の旅館の女将が義妹や昔の恋人と再会し人生を考え直す第三話。
 増村保造、市川崑、吉村公三郎という大映の看板監督3人と若尾文子、山本富士子、京マチ子という看板女優3人が組んだ“女”と“金”をめぐるオムニバス映画。昭和30年代の雰囲気が存分に味わえる秀作。
review

 第一話「耳を噛みたがる女」は増村監督、若尾文子主演。ダルマ船(家をもてない貧しい人々が暮らした舟、川崎など東京湾にも昔は多く見られた)に家族で暮らすキミはキャバレーで働いて男をその気にさせてだましてはお金をかせいでいる。しかしそんな彼女も本気で惚れた男がいて…

 これは増村らしい軽妙な作品、男を信用せずだましながらも、一人の男には惚れてしまうという女の心理を絶妙に描く。キミの出自を示す冒頭のシークエンス、彼女の手口を見せる続くシーン、脇役に株という脇の要素などどれもがパズルのピースのように収まるところに収まった秀作だ。

 長編を凝縮したというよりは長編のちょうど3分の1くらいの物語をうまくまとめたという感じで、増村らしさが感じられると同時に長編とは違うわかりやすさがあるという感じでとてもよかった。

 第二話「物を高く売りつける女」は市川崑監督、山本富士子主演。失踪した作家が海辺でなぞめいた未亡人に出会う。たびたび女を見かけたその作家は女に誘われるままに家に上がり、その女の家を買ってくれという申し出を受けてしまう…

 こちらは市川崑らしい遊び心にあふれた作品。市川崑はシリアスな作品も取れるしコメディも取れる。山本富士子というシリアスな作品が似合う女優をなぞめいた未亡人という役柄で登場させておきながら、それをコメディに転調するという仕掛けがにくい。

 競演の船越英二もさすがの雰囲気で、最後の最後まで目を離せない作品。3本の中でもプロットがもっとも優れているといえる作品で、短編としてはかなり秀逸なプロットだと思う。ちらりと登場する野添ひとみも効果的。謎も驚きも幸福感もあるといういい作品。

 第三話「恋を忘れていた女」は吉村公三郎監督、京マチ子主演。叶順子が婚約者とともに亡き兄の未亡人でいまは家督の旅館を取り仕切っている京マチ子を訪ねる。叶順子は兄が預けていたお金からいくらか出して欲しいと頼むが、何事にもやり手の京マチ子はそれを突っぱねる。その折、旅館で修学旅行生の一人が事故に会う。京マチ子はこちらもビジネスライクに処理しようとするが…

 こちらはいかにもな京マチ子が義妹の上京、旅館での事故、元恋人の出現などにより徐々に心境が変化していく。ベテランだけあって前2話と比べて落ち着いた雰囲気があり、短い時間の中でもじっくりと人間を描いているという感じがする。エロジジイを演じさせたら天下一品の中村鴈治郎がここでもいい味を出している。

 どの作品も本当に質が高い。日本映画の黄金時代である昭和30年代のど真ん中に、脂の乗った監督たちが競い合ったオムニバス。オムニバスというのはなかなか面白いものがないのだけれど、これは秀逸。30年代大映映画の入門編として万人にお勧めしたい作品だ。

Database参照
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国別・年順: 日本60~80年代

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