更新情報
上映中作品
もっと見る
データベース
 
現在の特集
サイト内検索
メルマガ登録・解除
 
関連商品
ベストセラー

オテサーネク 妄想の子供

怖い… シュヴァンクマイエルは本当に想像/創造力がすごいと思う。
★★★★-

2009/9/9
Otesanek
2000年,チェコ=イギリス,132分

監督
ヤン・シュヴァンクマイエル
脚本
ヤン・シュヴァンクマイエル
撮影
ヤン・シュヴァンクマイエル
出演
ヴェロニカ・ジルコヴァ
ヤン・ハルトゥル
ヤロスラヴァ・クレチュメロヴァ
パヴェル・ノーヴィ
preview
 子供が欲しいけれど、不妊のため出来ないホラーク夫妻、夫は落ち込んでる妻を元気づけようと別荘を購入、そこで掘り起こした木の根で子供の人形を作る。妻はそれを見て本物の子供と思い込み、育てようとする。隣家の少女アルジェビェトカはそんな夫婦のおかしな様子に気づき…
 アニメ界の巨匠シュヴァンクマイエルがチェコの民話をもとに実写とアニメを組み合わせて作り上げたダーク・ファンタジー。とにかく怖い。
review

 子供が欲しいけれどどうしても出来ない夫婦、その妻が落胆のあまり夫が作った木の人形を子供だと思い込んでしまう。アパートでも別荘でも隣に住む家の娘アルジェビェトカも子供が欲しくて色々と勉強している。ホラーク夫人は近所を説得させるため妊婦のふりを数ヶ月して、ついにその人形オティークを家に連れ帰る。そしてホラークが家に帰るとオティークは赤ん坊のように動き、泣くようになっていた。

 アルジェビェトカはある日、赤ん坊が実は木の人形であることに気づき、オテサーネクという民話とそっくり同じだということに気づく。その同派でオテサーネクは両親を食べ、次々と人を食べていってしまうのだ。そしてオティークもまずホラーク家の猫を食べる。

 この映画は本当に怖い。人を食べる木の人形オティークが怖いのではなく、そのオティークを本当の子供だと思い、あくまでかばおうとするホラーク夫人が怖い。赤ん坊への盲執、オテサーネクはその盲質を利用して生まれる怪物、そして母性愛に取り入って自らを拡大して行く。その怪物に魅入られ狂気のそこへと沈んでゆく恐怖がこの作品を覆い尽くしている。

 狂気に陥りどんどん変わっていくホラート夫人、そしてどう見ても不気味なオティーク、それを見事に造形したシュヴァンクマイエルはさすがだ。ちょっとクロースアップが多すぎてむしろ離れたほうが緊張感や恐怖感が増すのではというショットがあったり、全体的に冗長と感じられもするが、しかしこの恐怖の演出、物語の展開の仕方はさすがは巨匠というところだ。

 シュヴァンクマイエルといえばやはりアニメだが、もともとセル画を利用したアニメーションではなくクレイアニメなので、それを人に置き換えれば容易に実写映画を撮ることもできる。そしてそれに得意のアニメを合わせることで類希なる映画を撮ることができるのだ。

 怖い映画というのはあの手この手で見るものを怖がらせようとするのだが、この映画はそんなことはしない。だが怖い。一人の人間の狂気と、そこから生まれた一個の怪物、それだけで恐怖を演出するために、他の登場人物や物語のもととなる民話を巧みに使う。そして映画の主人公であるアルジェビェトカのキャラクターも秀逸だ。絶対にある分けないのだけれど、どこかでありそうだと思ってしまうようなそんな怖い話し、アニメであるにもかかわらずリアルな恐怖を生み出しているのはそんな感覚を与えるからだろう。

 怖いし気持ち悪いというイメージもあってちょっと敬遠しているところもあったのだが、やはりこれは見なければならない。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: チェコ/チェコスロヴァキア

ホーム | このサイトについて | 原稿依頼 | 広告掲載 | お問い合わせ