扉をたたく人
2009/8/16
The Visitor
2007年,アメリカ,104分
- 監督
- トム・マッカーシー
- 脚本
- トム・マッカーシー
- 撮影
- オリヴァー・ボーケルバーグ
- 音楽
- ヤン・A・P・カチュマレク
- 出演
- リチャード・ジェンキンス
- ハーズ・スレイマン
- ヒアム・アッバス
- ダナイ・グリラ
大学教授のウォルターは講義も適当、執筆している本も進まず、趣味で始めたピアノもうまく行かない。そんな彼にNYの学会への出席の依頼が。ウォルターは渋々行くことにするが、NYのアパートについて見るとシリア出身のタレクとセネガル出身のゼイナブが彼のアパートに住んでいた。一度は追い出した彼だったが、思い直してしばらく泊めることに。そしてタレクの叩くジャンベに興味をひかれる…
9.11後のアメリカの移民たちを人生の意味を失ってしまった大学教授の目から描いた佳作。名脇役リチャード・ジェンキンスがアカデミー主演男優賞にノミネート。

(C) 2007 Visitor Holdings, LLC All Rights Reserved
まず国連での癌と環境汚染についてのシンポジウムの様子が映され、子供たちが給食を食べる様子が映される。そして、その給食に使われている食材にどれほどの化学物質が含まれているかが明らかにされる。
そしてバルジャック村の試み、農薬を使用する農家の健康被害の凄まじさ、オーガニック給食にすることで生じる子供たちの変化などが語られる。
この映画が言っていることはまさにその通りだ。農薬は発がん性物質を多く含み、直接吸うことはもちろん残留農薬を口にすることも避けたほうがいい。多量の化学肥料は土壌を汚染し、周囲の環境も汚染する。化学肥料を多用した農地は病虫害に弱くなりなおさら農薬が必要になるという悪循環。このようなことを丹念に描いているのはこの作品のいいところだ。
そして衝撃的なのは農家の人たちがこうむる農薬による健康被害。その影響は農家にとどまらず、一般の人が使う殺虫剤でも発生するらしい。妊娠中の殺虫剤が子供の癌に結びつくというのはあまりに悲劇的な出来事だ。
そのような悲劇と対比される子供たちの笑顔、そしてやりがいを感じる調理師たちの笑顔、それらを見るとやはりオーガニックというのは素晴らしいと思う。オーガニックの農家と一般農家の話し合いのシーンでも、オーガニックに切り替えない農家に「なぜ?」と疑問を投げかけたくなってくる。
こんな学校で育ってたらよかっただろうになぁ…と素直に思う。
というわけで、オーガニックのよさや今の農業が私たちの生活と地球環境に及ぼす影響を学ぶという点では非常によく出来た映画だと思う。
ただこの作品はどうにも真面目すぎるように思える。社会問題を給食という題材を使って伝えるという発想はいい。しかし全体的にテレビのドキュメンタリーを見ているかのような感じで映画的なものが匂って来ない。マイケル・ムーアのレベルまで行けとは言わないが、もっと物語性を強くするとか、映像的な工夫をするとか、観客を引き込むような仕掛けが欲しかった。
個人的には子供たちが歌う歌の歌詞が非常に印象的(「毒が流れ出す」とか「樹々を手に立ち上がれ」とか歌っていた)で、それをもっと生かす演出があったらよかったのではないかと思った。まあそうするとちょっと左翼的になりすぎなのかもしれないが、映画としてはドラマティックになってよかったのではないかと。
環境を云々というドキュメンタリー映画が今は数多く作られている。その中で存在感を示すには内容もさることながら映画としての工夫がものを言うのだと強く感じた。本当に面白いドキュメンタリー映画というのは“ドキュメンタリー”という冠をはずしても面白い“映画”でなければならない。

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