更新情報
上映中作品
もっと見る
データベース
 
現在の特集
サイト内検索
メルマガ登録・解除
 
関連商品
ベストセラー
no image

クラウド9

★★★.5-

2008/11/28
Wolke 9
2008年,ドイツ,98分

監督
アンドレアス・ドレーゼン
脚本
アンドレアス・ドレーゼン
コーキー・ツィーシェ
イェルク・ハウシルト
撮影
ミヒャエル・ハモン
出演
ウルズラ・ヴェルナー
ホルスト・レーベルク
ホルスト・ヴェストファ
シュテフィ・クーネルト
preview
 60代前半のインゲは手直しを注文されたズボンを届けに70代の老人カールのところへ行く。そしてそこで魅せられるように愛を交わしてしまうふたり。家に帰ったインゲは夫と平穏な日々を過ごし、カールとのことは忘れようとするのだが…
  老人の性を正面からとらえたシリアス・ドラマ。カンヌ映画祭の「ある視点」部門で「一目惚れ」賞を受賞した。
review

 年老いたもの同士の恋愛がテーマ。女性のインゲのほうは60代前半だから、老人というにはまだ少し早い気もするが、もはや中年ではなく、老人にさし掛かっていることは間違いないし、“恋愛”や“性”というものとはもはや無関係と他からはみなされる年代である。

 主人公が老人であっても、恋愛映画は恋愛映画として進む。夫ある身でありながら他の男を好きになってしまった女、女の心は引き裂かれ、関係を続けるべきか終わらせるべきか、夫に打ち明けるべきか打ち明けぬべきか、悩ましい日々を送る。

 しかし、やはり主人公が老人である以上、“普通の”恋愛映画とは少し違う。

 インゲはカールと関係をもってしまったことについて「理性で抑えられなかった。だから仕方がない」という。しかし、本来ならばそれは理性で抑えるべきだったのだ。もう大人なのだから。「仕方がない」という言い訳が通用するのは子供だけで、欲望を理性で抑えることができるのが大人なのだ。それが出来なかったら「仕方がない」と開き直るのではなく、自分の浅はかさ、未熟さ、バカさ加減を心から悔いるべきではないか。開き直って子供じみた言い訳をするべきではないのだ。
  そして、そのことと関係を続けるかどうかというのは別問題だ。

 この映画の物語が痛ましく感じるのは、主人公のインゲが恋愛の問題と理性の問題をごっちゃにしてしまっているからだ。ある意味では彼女は60歳になってもまだ子供のままであり、人間として成熟していないのだ。そんなインゲにとってはこの恋愛はあくまでも“普通の”恋愛であって、恋に落ちたら周りが見えなくなっても仕方がないと考えてしまう。
  しかし、大人なら彼女をそのように観ることは出来ない。恋愛を絶対視する彼女はやはり「いい歳して」と見ざるを得ないのだ。

 老人も恋愛をする権利はあると思うし、性欲もあるのだからセックスだってしてもいいはずだ。この作品にたびたび登場する老人たちのラブシーンは決して目を背けたくなるようなものではなく、悦びを共有するという美しい行為に見える。
  しかしインゲの恋愛は自己中心的で周囲を傷つけ、その結果自分をも傷つけることになる。客観的に見ればそのような事態になるだろうことは十分予測できるのだが、彼女だけにはそれがわからないのだ。彼女の娘すら理解していることが彼女自身には理解できない。

 「恋は盲目」とはよく言うけれど、彼女は本当に盲目になってしまっている。老人にだって恋は許されていい、しかし恋に猪突猛進して周囲を傷つけるのは、老人というよりはひとりの大人としてやってはいけないことだし、それをやってしまうと結果的に一番傷つくのは自分ということになるのだし。

 この映画は人間というものを見せてくれる優れた映画だと思う。見終わるといや~な感じが残るのだが、それはこの映画が観る人の心に届いたということだろう。楽しくもないし、感動もしないが、見ごたえはある。こういう作品は貴重だと思う。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: ドイツ

ホーム | このサイトについて | 原稿依頼 | 広告掲載 | お問い合わせ