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茄子 スーツケースの渡り鳥

2008/6/10
2007年,日本,54分

 
          ★★★.5-  
     
 
 イタリア人の国民的スターレーサーであるマルコ・ロンダーニが自殺、ぺぺのチームメイトでマルコと同郷のチョッチは落ち込むが日本への遠征には参加すると言う。マルコの葬式に立ち寄り日本へ降り立った一行はレースの日を迎えるのだが…
  『茄子 アンダルシアの夏』の続編、舞台を日本に移し、ぺぺを取り巻く人々の友情を描く。日本のアニメとして初めてカンヌ国際映画祭の監督週間に正式出品された。
監督 高坂希太郎
原作 黒田硫黄
脚本 高坂希太郎
撮影 加藤道哉
音楽 本多俊之

出演 大泉洋
     山寺宏一
     大塚明夫
     藤村忠寿

 

 

 

 

 

 前作から4年の歳月を経て作られた続編。舞台を日本に移すが、その前にぺぺの新しいチームメイトであるチョッチと旧知であったスターレーサーの自殺というエピソードが語られる。レースでも疲れた表情で、マルコの葬儀も遠くから見つめるだけのチョッチの姿は彼の悩みの深さを言葉を使うことなく語る。そして、日本でコースを下見しているとき、彼の頭にマルコとの思い出がよみがえる。
  これは前作のぺぺと兄の関係に似ている。チョッチとマルコの間に距離が出来てしまった理由は語られないが、重要なのはそのことではなく、チョッチがマルコを尊敬し続けていながらどこかで自ら彼を遠ざけてしまっていたことなのだ。そのことと彼の自殺から生じる自責の念、それは本当は根拠のないものなのだろうけれど、チョッチにとっては人生を見つめなおす大きなきっかけとなるのだ。自分の才能のなさを無視できなくなって引退しようかと考えるチョッチと、才能がないことを認識しながら夢を追うぺぺ、このふたりの間の友情がマルコとの間の友情に挫折したチョッチを救う。
  複雑な人間の心理を地味に描くという点では、前作と同じく小さな世界を描いた好作品と言えるだろう。しかし、前作と比べるとどうもリアリティが失われてしまったように思う。新たにレーサーの視点からの映像が加えられ、レースのリアリティは十分なのだけれど、日本という異国にいる彼らをその異国にいるわれわれが見るという形になったことで彼らとの間に距離が出てしまったように思う。それによって今ひとつ入り込めない話になってしまったかもしれない。

 ただ、「水曜どうでしょう」のファンには前作よりもさらに楽しめる内容になっている。藤村Dは監督役になったことで格段にセリフが増え、彼とぺぺのやり取りではどうでしょうでのやり取りを思わせる会話が多数登場する。
  もちろん水曜どうでしょうファンに向けた映画ではないので、それで映画として面白くなるというわけではないのだけれど、こういうわかる人にしかわからないくすぐりがわかるとうれしいものである。
  原作にぺぺのエピソードは2話しかないそうなので、もう続編はなさそうだが、もっと続いても面白そうな話だ。