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トランシルヴァニア

2008/1/6
Transylvania
2006年,フランス,102分

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          ★★.5--  
     
 
 国外退去により消息不明になってしまった恋人を探してトランシルヴァニアへとやってきたフランス人のジンガリナとその友人マリー、まもなくジンガリナはその恋人ミランを見つけるが、ミランはジンガリナを捨てる。ショックを受けたジンガリナはミランの子供をおなかに宿したまま帰途に着くのだが…
  『ガッジョ・ディーロ』などロマの音楽にこだわり続けるトニー・ガトリフが撮った人間ドラマ。
監督 トニー・ガトリフ
脚本 トニー・ガトリフ
撮影 セリーヌ・ボゾン
音楽 トニー・ガトリフ
    デルフィーヌ・マントゥレ

出演 アーシア・アルジェント
     アミラ・カサール
     ビロル・ユーネル
     アレクサンドラ・ボージャール
     マルコ・カストルディ

 

 

 

 

 

 トニー・ガトリフは一貫して音楽にこだわった作品作りをしている。彼が世に出た『ガスパール/君と過ごした季節』こそオーソドックスなヒューマンドラマだったが、それ以降はこだわりを前面に出して独特な作品作りをしてきた。ロマをはじめとしてフラメンコなども扱ったが、やはり彼の原点はロマにあり、この作品もロマの里トランシルヴァニアを旅することで展開される。
  そして、恋人を探してここを訪れたジンガリナは「なぜか惹かれる」とつぶやき、彼女を守ってくれる友人マリーから離れ、一人さまようことにする。そして、ミランを探しているときに出会ったチャンガロと旅をするうちにすっかりロマに見間違われるまでに変貌していく。
  この物語はジンガリナの中にそもそもあった“ジプシー魂”の目覚めである。そもそもロマのミュージシャンであるミランを恋人に選んだ時点で彼女にジプシーの魂があったことは確かだ。しかもそれは音楽によって目覚めさせられたのだ。恋人を追ってやってきたというジンガリナの言葉に嘘はない。しかし、その深層心理にはロマとその音楽を求める気持ちがあったのだろう。だから彼女は恋人に捨てられて絶望してもその土地を離れない。ロマの人々と音楽は彼女を磁石のようにひきつけて離そうとしないのだ。
  トニー・ガトリフがこのようにしてロマの世界にひきつけられる人々を描き続けるのは、彼がそこに人間の本質を感じているからだろう。ロマ語で“人間”という意味の言葉“ロマ”を自分たちの呼称とし使っているロマは音楽(と踊り)にアイデンティティを求める。その音楽はさまざまな民族の音楽に通じる根源的なもので、多くの人の金銭に触れる。ジプシー・ギターの名手ジャンゴ・ラインハルトがさまざまな音楽に影響を与えているように、ロマの音楽は知らず知らずのうちに私たちに影響を与えているのも知れない。
  トニー・ガトリフの作品ははっきり言ってどれもそんなに「面白い!」という作品ではない。この作品もかなりきつい話し出し、物語の魅力もあまりなく、語られていることはつまみどころがない。主人公のジンガリナやチャンガロは魅力的だが、ただそれだけで彼らに共感することはできないし、彼らの世界は私たちの世界とはかなりかけ離れている。
  にもかかわらず、私はなんとなく彼の作品に魅かれ、新作を撮れば2本に1本くらいは観てしまう。それはその音楽を中心とした世界にどこかで惹かれているからなのだろう。この作品も冒頭の音楽と映像をリンクさせたオープニングのシークエンスは魅力的だし、ジンガリナやマリーが踊るさまには陶酔と爽快感がある。
  音楽は映画には欠かせないものだが、普段はそれほど意識に上らないものである。トニー・ガトリフは音楽を映画の中心にすえることで映画にとっての音楽の重要さを思い出させてくれもする。