| 石垣島を舞台にした高校生の青春群像劇という感じで、わかりにくい八重山方言には字幕も入り、沖縄という土地に対する意識は相変わらず高い。しかし、彼らがやる音楽は別に土地のものでもなく、石垣島や沖縄について考えさせるものは、その場所で展開されているということ以外にはない。BEGINは今でこそ沖縄の島唄の要素を存分に取り入れた独特の音楽を展開しているわけだが、当時はブルースを奏でて“イカ天”で優勝した。そこには沖縄の地域性というのもはなく、彼らの物語に“沖縄性”をことさらに盛り込むことは必要ではない。
だから、この物語自体、別に沖縄でなくてもよかったという話になってしまっている。電車に乗ったことがないということなら沖縄ではないほかの離党でも同じことだし、石垣島は他の小さな離党と比べるとかなり都会の部類に入るはずだ。沖縄にこだわる中江裕司監督が沖縄を舞台にとっているにもかかわらず、そこに沖縄である必然性がないということころにこの作品がどうもぼんやりした作品に成ってしまっている最大の理由があるのではないか。
物語が沖縄という土地にしっかりと根を下ろしていないために、ここに登場する青年達もなんだかふわふわとした感じになってしまっている。カンガマーのシーンなんかは、なかなか面白いのだが、その面白さがなかなか継続しない。アンガマーに参加し、土地と密接に関わるセイリョウとバンドでドラムをたたくセイリョウが今ひとつ一致しないのだ。それは加那子が沖縄空手をやったり、八重山バンド天国で民謡が歌われたりしても、それは同じことだ。
そして、そのせいもあって、BEGINをモデルとした彼らの歌と演奏がちっとも響いてこない。演奏も特にうまくないし、歌も特に魅力がない。BEGINの魅力はなんといっても比嘉栄昇の歌声の魅力にあると思うのだが、主役を演じた東里翔斗の声には残念ながらその魅力がない。しかも、バンド3人のつながりも見えてこず、主役の栄順以外の2人は完全に添え物になってしまっている。バンドとしてひとつの名曲を生んだという物語にするならば、もっといい物語の展開の仕方があっただろうと思うし、そうでなければ最後の演奏で観客を感動させることはできない。
BEGINの「恋しくて」はリアルタイムに“イカ天”で聞いて本当にいい曲だと思った。そのときは彼らが沖縄の石垣島出身だという知識などまるでなかったし、沖縄に島唄というものがあることすら知らなかった。それでも本当にいい曲だと思った「恋しくて」にインスパイあされた物語なら、最後の歌の場面でもっと盛り上がるだろうと思っただけに残念だ。結局BEGINの「恋しくて」も聞くことができなかったし…
題材はいいし、プロットも悪くないのだから、うまくすればもっと面白い映画になったと思うのだが、中江裕司監督の作品はどうもできにムラがあって、この作品は今ひとつなほうになってしまったという印象だ。
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