| アフロヘアのリーロイも、その恋人になるエーファも、リーロイの親友のディミもなんだかかわいくて、それだけで作品としては成り立っている気もするし、子供向けの作品としてはなかなか面白いのかもしれない。しかし、大人向けの作品としてみると何かが足りないという気になってくる。
この作品で一番面白いのは、リーロイを差別するネオナチ兄弟の行動である。とにかく相手をひっぱたき、とにかくつるんで暴力を振るり、犬に“ハイル”という芸を仕込ませようとする。もちろん、この作品はそんなネオナチに対する皮肉を込めた作品で、それが最もよく表れたのは、医者が「スキンヘッドの家族には骨折が多い。受動喫煙みたいなものか」というところで、このセリフは皮肉が効いていて面白かった。
しかし、このようにネオナチとアフリカ系というわかりやすい構図であるにもかかわらず、ネオナチ兄弟とリーロイたちの関係は今ひとつすっきりしない。ネオナチ兄弟もリーロイも結局相手にどのような感情を抱いているのかがはっきりと観てこないのだ。もちろん両方とも、恋人の兄弟⇔兄弟の恋人という関係もあってただ敵対することはできないのかもしれないが、その感情の機微が描かれているわけでもなく、なんとなくただぎこちない関係が続いているように見えてしまう。
リーロイが“ブラック・パワー”に感化されてマルコムXやなんかに入れ込んでいくエピソードもそれによってリーロイがどう変わったのかがわかりにくく、今ひとつ効果的とはいえない。
さらには、物語が展開していく中で、それぞれの登場人物が知っていることと観客だけが知っていることの区別が今ひとつついていない。このことはネオナチ兄弟は知っていて、リーロイは知らないということが明確にされないために、物語の展開にも、関係の変化にもメリハリがなくなってしまうのだ。
そして、リーロイと両親の関係もいまいちはっきりしない。両親は基本的にはリーロイを尊重し、リーロイの自由にしているわけだが、結局リーロイに反発されてしまうし、その関係もあまりうまく描かれているとは思えない。
一つ一つのギャグには結構面白いものもあり、リーロイという主人公の視点に絞ってみれば、わかりやすく感情も理解しやすく見ることができる作品ではある。もう少し映画としての組み立てをうまくすればかなり面白い作品になったと思うだけに、少し残念だ。オチにもメッセージがこめられていてそれはそれでいいのだが、その割にはどうも中途半端な印象が付きまとい、最後まですっきりしない。
でも、人種差別が題材になった子供が主人公のコメディなんていうドイツ映画は今まで見たことがなかったから、新鮮さはあった。映画祭というのはやはり新しいものを発掘する場でもあるから、このような作品を取り上げるのには意味があるだろうし、ここから広がっていくものもあるのではないかと思う。
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