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恋愛睡眠のすすめ

★★★--

2007/10/14
La Science des Reves
2005年,フランス,105分

監督
ミシェル・ゴンドリー
脚本
ミシェル・ゴンドリー
撮影
ジャン=ルイ・ボンポワン
音楽
ジャン=ミシェル・ベルナール
出演
ガエル・ガルシア・ベルナル
シャルトット・ゲンズブール
ミュウ=ミュウ
アラン・シャバ
エマ・ドゥ・コーヌ
preview
 父が亡くなりメキシコから母の住むフランスへとやってきたステファンは夢の世界に逃避しがちな青年。母に紹介された仕事がクリエイターではなく単純作業だと知ってがっくりしていたが、隣にステファニーという女性が引っ越してくる…
  『ヒューマンネイチュア』の奇才ミシェル・ゴンドリーが現実と夢を混同してしまう青年を描いたロマンティック・ファンタジー。
review

 この作品を面白いとあまり思えなかったが、結構すごい作品ではあると思う。物語のほうはメキシコからフランスへやってきたフランス語もろくにしゃべれない青年が、予想外の仕事に落胆し、隣に引っ越してきた女性との間に誤解が生じ、その誤解を解こうとしているうちに恋に落ちてしまうというもの。これ自体はそれほど珍しい物語ではない。
  ただ、この青年は夢を現実と混同してしまう癖があり、自分の記憶が現実の記憶なのか夢の記憶なのかがときにわからなくなってしまったり、夢の中でやったと思ったことを(夢遊病者のように)実際にやってしまったりしているのだ。そして、この映画がすごいと思うのは、観客も徐々に現実と夢を行動してしまうように構成されているということだ。基本的には夢の世界はダンボールの車やセロファンの水など現実にはありえないものが登場し、現実と区別されているのだが、現実の世界でも1秒タイムマシンといったステファンのおかしな発明も出てくるし、終盤になるとステファンが突然に白昼夢のように夢の世界に入り込むことがあった、現実のなかに一瞬夢が挿入されたりする。そうなるとひとつのシーンからひとつのシーンに移ってすぐにはそのシーンが夢なのか現実なのかわからなくなる。時にはそのシーンが終わっても果たしてそれが夢だったのか現実だったのかわからなくなり、そのあとの展開を見て始めて判断がつくということもある。そのように映画を構成するというのはなかなかすごいと思う。実際に夢と現実がごっちゃになる人というのはそうはいないと思うが、いやに鮮明な夢を見てそれが本当に怒ったことだと信じてしまったり、起きているときに「もしかしてこれは夢なんじゃないか」と思ったりすることがある人は結構いるだろう。この作品はその感覚をどこまでも敷衍して本当に記憶と現実に夢が紛れ込むという感覚を表現した作品だ。
  ただ残念なのは、その夢というのがこの青年や“乙女”だけが見るような夢で、彼とその夢の夢としてのよさを共有できる観客は決して多くはないだろうということだ。あるいは、この青年の夢への逃避の仕方がどうも納得できないということもある。かく言う私も、どうもこの青年の感覚が理解できず、いまひとつ物語りに入り込めなかった。夢と現実が混乱するという目くるめく体験もその夢(寝ているときに見る夢)が夢(現実の理想としての夢)としてリアリティを持たなければ、魅力的にはなりえない。
  だから、この作品は質はいいが、見るものを選ぶといわざるを得ない。果たしてどういう人がこの作品にしっくり来るのかということは判断しきれないが、少なくともこの青年ステファンの見る少年ぽいかつ乙女チックな夢の世界を違和感なく受け入れることができる人でないと、この作品世界自体に拒否反応を起こしてしまうのではないかと思う。感じとしては『ドニー・ダーコ』(というSFファンタジー映画があった)に『アメリ』を“加えた”感じ(平均した感じではなく、増長されている感じ)。一筋縄ではいかない世界観だ。

 そのような世界観を受け入れられないとこの映画を楽しむのは苦しいが、ガエル・ガルシア・ベルナルとシャルトット・ゲンズブールを見るのは楽しい。ガエル・ガルシア・ベルナルはいろいろな映画に引っ張りだこだが、この作品を観るとその理由もよくわかる。彼は(メキシコ人という前提があれば)どのような役でもこなせるのだ。印象としてはサスペンスやアクションでの男くさい役が結構多いという感じだが、ストレートな恋愛映画もこなすし、この作品のような情けない男を演じることもできる。ラテン系の濃さをもってこれだけの演技力をもつ若い役者はなかなかいないと思う。おそらくこれからもハリウッドでもヨーロッパでも引っ張りだこだろう。
  シャルロット・ゲンズブールのほうはちらほらとは見かけるが、それほど大活躍という感じではない。おそらくそれは子育て中ということもあるのだろう。しかし、ために見てもこの役者には存在感がある。年齢を重ねるほどに母親(ジェーン・バーキン)に似て、地味ながら強い印象を与える存在感を発しているように思える。この作品でも今ひとつつかみ所のない役柄ながらガエル・ガルシア・ベルナルとうまくバランスをとって映画の世界を支えているように見える。彼女は2007年9月、脳内出血で緊急手術を受けた(原因は数ヶ月前の水上スキーでの事故)ということだが、順調に回復しているそうで、早い復帰が期待される。

Database参照
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国別・年順: フランス

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