| この作品は日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞した。メジャー映画会社が順番に一番の話題作に賞を上げているという感じだった日本アカデミー賞でいわゆるメジャーではないシネカノンの作品が選ばれたというのは意外だったが、映画の内容としては前年の『ALWAYS 三丁目の夕日』と同様“昭和”を強く感じさせる作品で、まさに時代が求める作品ということなのだろう。
そしてこの作品は『三丁目の夕日』と非常に近しいものを感じさせる。それは“ハンカチもの”ということだ。“ハンカチもの”といえば昭和三十年代辺りに数多く撮られたとにかく観客に涙を流させることを主眼としたような感動作だが、この作品も『三丁目の夕日』もまさにそのような作品で、舞台設定もそのころということでまさに1960年代のリバイバルなのだ。
私はこういう作品は嫌いではないので、楽しく見ることができたが、ここまでベタだと興ざめしてしまう人も少なくはないだろう。さらに、あちこちでいわれていることだが、この作品は『プリティ・リーグ』によく似ている。まあ虐げられている女性が決起して何かを成し遂げるという物語はどこかで似通ったものになるのだろうし、ベタというのは似通ってくるものだから仕方がないのだけれど、この作品はいくつかのイギリス映画(『リトル・ダンサー』や『ブラス!』)にも似ていて、「どこかで見たことあるなぁ…」という感覚が常に付きまとうので、いまひとつ「よかった!」と言い切れないのだ。
しかし、この物語が描くのは異なる価値観を持つ者との和解であり、肉親でありながら他者である母と娘が心を通じ合わせることを描くことで、他者への想像力の意味を問うものだ。時代や場所や人種が人間同士を断絶させ、相手を理解できない他者とみなしてしまうという悲劇は家族の間にも起こりうるし、今も起こっている。しかし、それは想像力を働かせることによって乗り越えられるものなのだ。この作品はそんなことも考えさせてくれる。
しかし、時代や道具の設定に甘さも見られるし(炭鉱町なのに石油ストーブ?など)、ダンスのシーンは編集でごまかそうとしてるのが見え見えだし、CGもつたないから、いかにも流行の“昭和もの”のひとつという風に見えてしまうし、実際にそうでもある。だが、そんな作品の中ではかなり上出来な作品だろう。特によかったのは役者陣かもしれない。松雪泰子は登場時は「年取ったな〜」という印象を与えながら、物語が進むにつれて輝きを取り戻すという人物像をうまく表現しているし、何といっても蒼井優の存在感がすばらしい。演技がうまいというよりは雰囲気があるという感じのものだが、彼女の表情が何度も映画を救ったと思う。しずちゃんは…あくまで話題づくりか。
そして、なんと行ってもよかったのは音楽だ。日系ハワイアンであるジェイク・シマブクロは日本でもすでに有名だが、彼の音楽が退屈になりがちな序盤に前面に出されることで観客をしっかりとつかみ、物語が盛り上がってくるにつれて背景へと下がっていく。映っている景色はちっともハワイではないけれど、音楽だけは紛れもなくハワイだという気がした。
没落してゆく人々が新しい希望を見出すという物語は世界中どこにでもあるし、どこでも人を感動させる。パクリだ何だと言われるけれど、このような物語というのはどうしても似通ってしまうものだから、堂々とパクリだと言えばいいと私は思う。今までにあったものを組み合わせ、いくらかオリジナルを加えることで新しいものを作り出すというのも才能だし、その意味でこの作品はよくできている。
少なくとも原作をまんま映画化する作品よりは創造的だし創意工夫があると思う。いい点も悪い点もたくさんあるので賛否両論も仕方がないが、こういう作品はあってもいいと思う。
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