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ワタルがファンタジー世界(ビジョン)の中に入るまでの話はともかく、そこには行ってしばらくの展開はいかにもRPGの導入部という感じで、今ひとつ乗っていけない。別にRPGが悪いと言っているわけではないが、そのシステムについて説明されないままそこに引き込まれてしまった観客はわたると同様わけがわからないままそこに置かれ、非現実的な現象を現実として受け入れろと無理強いされるのだ。普段からRPG世界に馴染んでいるような人なら、すんなりと入り込めるのだろうけれど、そうではない人には「なんだこの世界は?」という疑問が先にたってなかなかその世界を味わうことは出来ないのではないか。見習いの勇者とか魔導師とか、いろいろな生き物とか、いろいろな街とか、洞窟やらなにやらという舞台装置はあまり一般的なものとはいえない。
だからそこで躓いてなかなか物語りに入り込めないというのが一般的な反応ではないかと思う。それでもなんとなく世界の成り立ちが飲み込め、主人公たちのキャラクターにも馴染んできた終盤には結構面白く見ることが出来るようになる。特に、ワタルとミツルの内面の葛藤はなかなかうまく描かれていて、「何が自分にとって本当に大事なのか」というテーマを掘り下げて行く。
おそらくこの作品は、RPGに馴染んでいる子供にはいい作品ではないだろうか。そして今の子供の多くはRPGの世界に馴染みがあるだろうから、多くの子供にとって楽しめて、また何かを残す作品になるのではないか。アニメ作品も最近は大人が楽しめるものが数多くあり、その意味ではこの作品は今ひとつと言わざるを得ないが、本来的な子供向けという意味ではいい作品なのだろう。
私は原作は読んでいないが、稀代のストーリーテラーである宮部みゆきの作品であり、かつハードカバーで大部2冊(文庫で3冊)というボリュームを見ると、原作はもっと面白いものなのだろうと想像できる。私は宮部みゆきという作家の文章が好きで、その流れるような記述は現代の日本語の手本にもなると思う。そしてもちろんストーリーテリングの方法も秀逸だ。
もしこの作品を観て子供が原作に興味を持ち、さらに宮部みゆきに興味を持つようになるのなら、その子供はきっと本が好きになって、いろいろな本を好きになるだろう。そんな勝手な希望を持ちながら小学生くらいの子供にこの作品を薦めるのも一興だと思う。
素人が集まったキャストには懸念があったが、ミツルを演じたウエンツ瑛士以外はそれほど違和感はなかった。
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