ホーム メルマガ リスト

 

1912    

ふたりにクギづけ

2007/2/11
Stuck on You
2003年,アメリカ,119分

  no image
          ★★★--  
     
 
 マーサ・ヴィンヤード島でバーガーショップを営むボブとウォルトの兄弟は腰の部分がつながった結合双生児、俳優志望で明るいウォルトと引っ込み思案のボブを島の人々は温かく見守ってきた。しかし、ウォルトがハリウッドに出てプロの役者になりたいと言い出す。ボブは島に愛着があり反対するが、3ヶ月だけという約束で試して見ることにする…
  辛辣なコメディから社会的弱者を題材にしたコメディへと傾向を変えるファレリー兄弟が結合双生児を扱ったハートフル・コメディ。本当にハートフル。
監督 ボビー・ファレリー
    ピーター・ファレリー
原案 チャールズ・B・ウェスラー
    ベネット・イェーリン
    ボビー・ファレリー
    ピーター・ファレリー
脚本 ボビー・ファレリー
    ピーター・ファレリー
撮影 ダニエル・ミンデル
音楽 マイケル・アンドリュース

出演 マット・デイモン
     グレッグ・キニア
     エヴァ・メンデス
     シェール
     シーモア・カッセル
     ウェン・ヤン・シー
     メリル・ストリープ

 

 

 

 

 

 ファレリー兄弟はやはりメリーに首ったけなどの下品なギャグの印象が強い。しかし同時に弱者に対する視線も持ち合わせており、『愛しのローズマリー』あたりからそれが表に出てくるようになった。この作品は、その社会的弱者に対する視線を前面に出したもので、結合双生児を主人公としたのだ。
  結合双生児と言うと、まずベトナムの「ベトちゃんドクちゃん」を思い出すが、結合双生児と言うのは必ずしも人為的な影響によって生まれた奇形児というわけではなく、一卵性双生児に約200分の1の確率で生まれる現象だといわれる。その中の一例にシャム双生児の語源となったバンカー兄弟がいる。1811年に対で生まれたこの兄弟は肝臓だけを共有する結合双生児で、この作品のテナー兄弟のモデルになったと思われる。
  つまり、結合双生児自体は今もどこかにいる(出生全体から見ると2万から10万分の1の確率で発生する、ただ死産あるいは死後まもなく死亡する可能性はかなり高い)のだが、タブー化されているために目に触れないのである。だからこそこれを映画の題材として人々に見せることには意味があると思う。
  だからこそ、ファレリー兄弟もこの結合双生児を題材に選んだのだろう。

 そしてファレリー兄弟は、結合双生児の双子を同情の目で見るのではなく、普通の人間とまったく変わらない目で見る。この兄弟は彼ら自身の気質と環境に恵まれて、まったく普通の人間として育つことができた。そんな彼らが島を出て社会にでるとき、何が起こるかを描くのだが、そこに表れるのは相変わらずの彼らの健全さと社会の醜さである。
  結合双生児を貶めているのは彼ら自身の身体的な問題ではなく、周囲の彼らに対する評価なのである。その周囲のドタバタを面白おかしく描いて、この作品はコメディになる。ボブとウォルトがヒーローであり、周囲はヒール、そんな構図でコメディを展開して行くのだ。彼らはふたり、まさにぴったりくっついた兄弟であり、二人が協力すれば、普通のひとりの人間より聡明で強い。それを描くことで、彼らを馬鹿にしていた日々とがしっぺ返しを食らう、それを面白おかしく描くのである。
  それは、なかなか面白く、観ているほうも気持ちが入るし、心温まるわけだが、もう少し彼らの苦悩や、つらさを描いてもよかったのではという気がする。常に別々になりたいという彼らの欲求は描かれてははいるが、彼らにはもっといろいろ悩みがあるだろうし、不便があるだろう。それを面白おかしく映画いてもこの作品の扱い方なら差別的なギャグとはならないはずだ。この部分を描かないことでこの作品は結局、腫れ物を触るような慎重さも併せ持ってしまった。彼らを本当に差別せずに扱おうとするなら、彼らに対して辛辣に描くことも必要なのではないか。もちろん、それを見れば居心地は悪くなるかもしれないし、受け入れられにくいということもあるとは思うが、本気で社会的弱者を題材にコメディを作ろうと思うなら、それくらいの気概が必要だと思う。
  ファレリー兄弟が今後もこのような社会的弱者を主役にしたコメディをとっていこうとしているなら、導入としてはいい作品だとは思う。